「リアル・スティール」
シンプルなストーリーに、ボクシング物語が元来持っている熱を乗せて、確実に観客まで届く作品に仕上がっている。登場するロボットは個性豊かで、男の子心をくすぐる。シングルにもカップルにも割と見やすい作品。家族連れにはこの熱はあんまり向いていない。以下ネタばれ。
主人公ロボットは、廃材置き場で拾われてから、その特殊な機能(才能)を開花させながら、世界チャンピオンに挑んでいく。最後に、闘いに勝って試合には負けるという、ボクシング物語の定石を踏むわけだが、その過程はあつい。
何体もの格闘ロボットが登場する中で、「動物園」と呼ばれる場末の闘技場のチャンピオンロボットが、愛嬌があっていい。そこそこの実力で凄んではいるものの、よくある自滅的負け方。その操縦者はパンク風の若い男だが、見かけによらず割と正直者。何か、素朴なアメリカを見る思いがする。単なる思い込みかもしれないが。
試合でインチキをする場面が出てこないのがいい。陰湿な妨害工作はアメリカンドリームのお話にはふさわしくないし、なによりこれは、忘れ去られた古いロボットが勝ち上がっていく筋に重ね合わせて、機械に仕事を奪われ生き方さえ見失った普通の人間が、再生していくお話でもあるのだから。
人間とロボットの協働を高いレベルで実現することで、機械が独自に何でもこなす相手に打ち克つというのが、このお話の核。人の存在を不要にするような機械の在り方は、ここでは抑圧的なものとして否定的に扱われる。その抑圧的な仕組みを動かしているのが、外国訛りの英語を操る美女と謎の東洋人というところが、米国人の主流を占める多数派の複雑な心境を表しているかのよう。
主人公ロボット”アトム”を操縦する少年を引き取って育てようとする金持ちの叔母さんが、ヒラリー・クリントンのそっくりさんなのは、どういう含意なのかと考え込んでみたりもする。
途中、”アトム”が少年の言葉を理解しているかのようなシーンを見せて、しかし掘り下げはしないなど、本筋から遠いところは潔く切っている。お話の構成としては少々不満だが、単なる機械に対する過剰な思い入れを描かない点は好ましくもある。自然科学の産物たるマシーンは、本質的に再現可能であって、それゆえ量産できるものなのだから、この醒めたスタンスは正しい。
などなど、いろいろ想像を刺激してくれつつ、昔ながらのあついストーリーをちゃんと感じさせてくれる、出来のいい一本でした。
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