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2011.10.10

「ツレがうつになりまして」

お友達夫婦が、夫のうつという困難を乗り越えることで、本物の夫婦になるお話。毎日仕事に時間を取られて幅のない人生を送っている大多数の人に、ゆとりと寛ぎを教えてくれる。以下ネタバレ。

庭付き平屋の広い一戸建てという舞台に、妻はセミプロの漫画描き、という設定は、普通の都市生活者から見ると、さざえさんと同程度に現実離れしている。けれどもそれによって、描きたいことに集中するための場、雑音が入ってこない下地を作っている。

そうしたうえで、うつという病をじっくり時間をかけて描く。妻が大雑把でゆるい性格だったのは、夫にとって救いだった。作中には、妻が原因でうつになったという男が登場して、そうした不幸もあることを暗に示している。

うつの描写に時間を掛けながらも、この作品の力点はそこにはない。治癒の過程で交わされる、まだお友達感覚の抜けない夫婦のやりとりが眼目だ。妻に対して申し訳ないと思い詰める誠実な、しかし本当は遠慮がちで他人行儀な夫。その苦渋を、手を変え品を変え描き出す。繰り返しなのだが、うつ治療の様々な段階を材料に使って飽きさせない。

半年、一年に及ぶプロセスの末に、夫も妻もそれぞれに、素の自分を世間の前に置いてみることができるようになる。そして何よりも、互いに対して、そうできるようになる。お友達夫婦からの卒業。健康なときは意識しないが、病にかかって自分ではどうにもならない状況ではじめて、他者に頼ること、自分を飾らないことを知る。


作り手は、結婚式場の同窓会という仕掛けを使って、妻がそれを言葉にする機会を設けている。しかも、誰もが知っているあの言葉を使って。このあたりの巧さにぐっとくるものがある。
夫についても、隠していた闘病日記を妻に渡す、それも、妻が書くといって張り切っている本の材料に、と言わせることで、妻だけでなく世間に対して、飾らない姿勢を覚えた夫の成長を表している。


ツレの情けなさを存分に見せた堺雅人、過不足なく味のある晴子さん役を務めた宮崎あおい、いずれも毎度期待を裏切らない好演でした。

これ、実話に基づく原作本があるのね。

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