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2011.10.22

「カンパニー・メン」

先週観ていたのだが、何を書けばいいのか迷った。映画は大筋で、豊かな中間層の目線で描かれている。しかし終わりを見ると実に複雑な気持ちになる。以下ネタバレ。

勤続十何年というベテラン社員のリストラ。それに続く仕事探しを通じて知る、世間というもののありがたみ。これまでの自分の恵まれた生活の贅沢と不遜。といえば、それはどこの日本の結構な企業の勤め人の話かと思うけれども、さにあらず。これは、世界一豊かなはずの国の話。映画だけど。

海を越えて聞こえてくる米国の話といえば、経済学者さんや企業家さん達が称揚する自由と競争の輝ける国のイメージだが、現実はたぶん、そうでもないのだろう。物言わぬ大多数は、海のこちら側と何の違いもなく、普通に雇われとして働き、解雇されたり失業の苦しみを味わったり、しかしそのお陰で新たな価値観を見出したりして、なんとかかんとか生きている。そういう中間層に支えられた資本主義の衰えゆく姿を、この映画は指し示しているかのようだ。

それにしても、主人公の、よくできた奥さんに惚れる。失業当初は事態を受け入れられず、相変わらずの生活水準を押し通そうとする夫を、事実は指摘しながらも、なじる様子もなく、むしろ励ましながら、夫には黙って必要な手を打っておく。こどもたちの心理もしっかり把握して、夫に適切なアドバイスをする。良妻賢母という言葉はこの奥さんのためにあるような。少々出来過ぎでかえって現実感がないくらい。

子どもも健気だし、義理の兄は酸いも甘いも噛み分けた苦労人だし、言うことない恵まれた家族と親類縁者。これならいっぺん失業くらいしてみるのもいいのではないかと思えてくる。

現実には、家族のサポートもなく、年齢的にも再就職の望みはないケースもあるだろう。作中では、そうしたケースの残念な結末も描いている。比較してみれば、主人公の恵まれぶりがわかる。

その一方で、BSやPLだけ見て事業を売り買いし、最終的には会社そのものを売り払ってしまうことで、数百億円の個人資産を手にする企業家も描くことで、1%が24%の富を手にする社会の一面をも描いている。


この映画のうまいところは、その両極端をつなぐ位置にも、重要なキャラクタを配置して、じっくり描いているところ。階級対立などといった単純なモデルでは括れない実相が表れている。

失業者たちを結局救うのは、この中間に位置する男。会社の株で多少の資産も築いたが、現場労働者を人間として扱う心も持っていて葛藤を覚える男。上流階級風の浪費癖がある正妻のほかに、有能なビジネスパーソンである愛人も持つ旦那でありながら、工員たちからも尊敬されているこの男が、自分のちょっとした資産で会社を起こし、一応、解雇された元従業員たちの雇用を確保する。

で、問題は、その彼が起こした新しい仕事だ。
以前の会社でやっていたのと同じ、造船業。すべての費用が割高な先進国で、なおかつ過剰な設備投資で競争力を失い、構造不況業種として長らく斜陽のレッテルを貼られているカテゴリだ。この選択はどうなのか。

戦略眼や工夫のなさに顔をしかめることもできるし、質実剛健な気風を取り戻し一丸となって邁進すれば、コストの低い新興国に対してもまだまだやれるのデス、という見方もできる。

誰しも、自分がうまくやれることに集中するのが一番いい結果を生むものだ。そうして没頭しているうちに寿命を迎え、何か別の得意なことを身に付けた次の世代に場を譲っていくのが、人の幸せというものだが、世の中がそれにペースを合わせて動いてくれるとは限らない。得意なことをやっていても食べていけない不幸が来る。

映画は、うらぶれた様子の造船所跡を映して終わる。戦略なきこの一団に、彼らの苦労に見合う程度には、幸福が訪れればいいのだが。


(※今現在の造船業は、設備の淘汰が進み、新興国需要などで盛り上がっているのかもしれないので、上の話はあくまでも映画の中のこと、ということで。)

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