« 「プリースト」 | Main | 雑記110925 »

2011.09.24

「サンクタム」

洞窟探検の一行が、嵐による鉄砲水で出口を塞がれ、未知の経路を探りながら脱出するまでを描いた作品。3Dでなくてもよかったが、3Dで奥行き感は確かに出たかもしれない。底知れない洞窟の深みを描くには、それは不可欠だと、作り手は思ったのだろう。暗く美しい洞窟の映像を背景にしながら、しかし実は、人間ドラマで見せる映画。ナイーブな神経にはややきついかもしれない。以下ネタバレ。

脱出に集中する主人公の探検家の言動は、時に非人間的に映る。脱出行を共にする仲間からさえ、そう見られてしまう。彼の息子も、途中まではそうだった。実際、陽の当たる地上では、社会性ある人間の行いとは思えない。

絶体絶命の非常時に際してさえ常識を温存しようとする周囲から、彼の行動はことあるごとに避難され、とうとう探索そのものが行き詰まりそうになったとき、彼が言った言葉がある。「洞窟に入ると迷いがなくなる。ここは私にとっての教会なのだ。」

このセリフが、この映画の核心と言える。

強烈なプロ意識、目的への強い集中力といったことはもちろんあるだろうが、それだけでは、時に非情とも思える彼の行動は説明しづらい。しかし、このセリフを聞いて、私はこの映画を受け容れることができた。

あの暗い洞窟は、彼にとっては全宇宙そのものであり、人の生死も、その中では相対化される。いつか自身も同化するときを予感しつつ、何事もないかのように、日常を過ごしている。これは一種の悟りに近い。

ただの洞窟探検にそこまで入れ込むなんてと思わずに、彼も我も五十歩百歩と思う感性を持つ向きには、お勧めの一本。

|

« 「プリースト」 | Main | 雑記110925 »

映画・テレビ」カテゴリの記事

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack


Listed below are links to weblogs that reference 「サンクタム」:

« 「プリースト」 | Main | 雑記110925 »