「ブラック・スワン」
迫力に圧倒された。映画館を出るとき、少しふらついてよろめくほど。なるほど賞を取るわけだ。以下ネタバレ。
その迫力の主な理由は、ハンディカメラを使った人物のアップが多いこと。ほとんど、ナタリー・ポートマン演じるニナのアップでお話を紡いでいるようなもの。カメラのブレも高度に計算されていて、手法として完全に使いこなされている。そうした手法の熟練が、しかし添え物に思えるほど、ナタリー・ポートマンの存在感がすごい。
内容は思い返してみるとありがちだが、映画に没入している間はそうは感じさせない。主人公の幻覚を効果的に挿入してストーリーの陳腐感を消し、次に何が起きるのか予測しがたい緊張感を与えている。
エンディングに至る間の謎が、その最たるもの。あの控室の大量の血は誰のものか。官能と誘惑の黒鳥リリーか、もしや抑圧の主因だった母親か。疑惑をはらみながら、ひとつづつ可能性を消して、最後に現われた真実は。
やや残念だったのは、白鳥と黒鳥のバレエ内での演じ分けを感じとることができなかったこと。確かに、本番の黒鳥は、映画的手法を駆使して迫力を出していたが、踊りそのものには、それとわかるような突出したものはなかった。
「しゃべれどもしゃべれども」という邦画があったが、あれが、映画というフレームの中に落語という芸をうまく納めて、落語の面白さを、映画のフレームとは無関係に感じられたのに比較して、この「ブラック・スワン」は、バレエという芸術そのものを感じることはなかった。
とはいえ、それでこの映画の値打ちが落ちるわけではない。ナタリー・ポートマンが、繊細で臆病で抑圧された優等生の顔と、大胆で傲慢で開放的な悪党の顔を、表情でよく演じ分けていた。
ここしばらく低調だった公開作品の中では、飛び抜けた出来の一本。一人で観てもよいし、15禁部分が気にならない連れと観てもよい。
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