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2011.03.21

「トゥルー・グリット」

”Grit”を”勇者”と訳しているのをどこかで見かけたが、それはたぶん違う。むしろ、”気骨”あるいは”気概”とでも言うべき言葉。普通に人間らしい軟らかさに包まれた中に、噛めばごりっと歯に当たる小さく固いもの。その気骨を持った3人の冒険を、ユーモアも交えつつ描いた良作。以下ネタバレ。

気骨というものをあまり普段から表に出していると、それはそれで暮らしにくい。だから普通は、より軟らかいもので包んでいる。飲んだくれでやさぐれていることもあるし、礼儀正しい紳士を装っていることもあるし、知識で鎧ってはいるが、たった14歳の少女であったりもする。外見はまったく異なるこの3人は、しかし、悪党どもを追う追跡行の末に、互いの中の固いものに気付くのだ。

正義とか勇気という言葉はずいぶん手垢がついてしまったけれど、この作品に表れる気骨は、物事の最も基本的な部分は正しくあるべきだと考える正義感と、それを実現しようとする勇気とに根ざしている。賞金とか契約金とかの理由付けは、一種の照れ隠しに過ぎないし、酒飲みの不埒さとか、頭でっかちの高慢さとか、礼節のひ弱さとかも、表層的なものであって、それが正義というものの像を歪んで見せることはあっても、正義そのものが歪んでいるわけではない。そして、気骨というものは、互いに共鳴するものであって、共鳴したときに大きな力を発揮するともいえる。そして、正義の実現には代償も伴う。

そんな風なことを、理屈抜きで教えてくれるのが、この作品。表面的な損得や怠惰に流されがちな世相にあって、「天罰は必ず下される」(ただし代償を伴って)、を痛快に示してくれる。

言葉のリズムが特徴だそうだが、英語が母国語でない我々にも、14歳の少女が商人との交渉で見せるリズムに載った口舌には圧倒される。酔いどれ保安官の歌うようなしゃがれ声も独特。

旅の終わりに命の危機に晒された少女と、それを救おうと夜通し馬を走らせる保安官のシルエットが、感動的に幻想的で美しい。この夢うつつの帰還の途中でさえも、老年の男から少女へ、馬の処置を通じて、代償の払い方が、無言で伝えられる。同じ気骨を持つ者が時を越えて受け継いでいくべき痛みが、無言で語られる。

エピローグで、”旅を楽しんだ”と言ってもらえた亡き保安官は幸せ者だ。彼の気骨とユーモアは、確かに記憶され、受け継がれたのだから。

原作も有名だそうだが、映画作りに手抜かりはない作り手を得て、文句の付けようのない作品に仕上がった。見て損のない一本。

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