「デイブレイカー」
ちょっと変わった設定のヴァンパイア映画で、アイデア勝ちといえる。ヴァンパイアの孤独や強さはあまり強調されず、その意味では物足りないが、代わりに意外な展開が用意されていて、楽しめる。以下ネタバレ。
この映画では、ヴァンパイアは小数で隠れて生きる存在ではなく、多数で世界の主人である、という設定がまず面白い。超絶的な能力によってではなく、その圧倒的な数ゆえに、世界の正統な主人であるのだ。
数が多ければ特別な存在ではなくなる。満員電車で通勤する勤め人、駅のスタンドでコーヒーを頼む人、給仕する人、洗濯する主婦、学校で遊ぶ子供たち、全てがヴァンパイア。中には適応を拒んで焼身自殺を図る者もいる。浮浪者のヴァンパイアもいれば、それを取り締まる警官のヴァンパイアもいる。数の多さが下世話なイメージを拡大し、ファンパイア=特別という先入観との間に不協和音を奏でる。
冒頭で描かれるこの世界が、まず不思議な感覚を呼び起こす。あの、醜い怪物としてのヴァンパイアはどこへ? それは、途中からちゃんと登場する。それが醜い怪物である理由も納得感があり、うまく考えられている。
その醜い怪物が、不死の彼らが抱える問題なのだが、解決は意外な方向からもたらされる。この単純だが盲点を突いたアイデアは、映画の肝だから書けないが、このアイデアを軸に後半の物語とドラマが組み立てられていて、映画としての満足度を上げている。終盤で、問題解決の道筋だけは示されたものの、実施の過程で予見される幾多の困難や凄惨な展開は、暗示されるだけで終わる。この終わり方もなかなかいい。
上映館は今のところ少ないが、映画を観た、という満足感を味わえる作品。
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