「日本は世界5位の農業大国 大嘘だらけの食糧自給率」
読むと、日本の農業に対する認識が一変する。農業もひとつの産業であり、生活の一形態として特殊な見方をするのは誤りだ、という主張が基調になっている。それを、数字を挙げて説明しつつ、日本の農業の実力は相当高く、海外に進出することは十分可能であり、そこに活路を見出すべきとしている。
それにしても、日本の農業政策はもう少し整合性のとれた、産業の発展を後押しするものにならないものかとは思う。ひとつには、個別所得補償のような福祉政策と切り離して考えること、もうひとつには、県ごとに研究開発体制のもとで国内で過当競争するのをやめ、海外市場へ目を向けることが、本の中では取り上げられている。
著者の主張の中で引っ掛かる点を挙げるとすれば、農業は何世代にもわたって、家族制度に基礎を置く農家が資本と技術を蓄積してきたものであり、農家以外の者が参入して簡単に成功できるものではない、としている点だ。その一方で著者は、海外への商品作物の輸出、技術移転による海外生産と日本への輸入など、企業家精神を称揚しており、矛盾とまでは言わないが、論旨としてはやや狭い道をあえて選んでいるように思える。「農業経営者」なる雑誌の副編集長という立場に沿えば、そういうことになるのかもしれない。新規参入の9割が失敗という現実も考慮しているのだろうか。
農林水産省が主張する食糧自給率向上のまやかしについては、疑いようがない。とはいえ、基本法の中で謳ってしまっている以上、役人の立場からそれを覆すことはできまい。また、しようともしないだろう。状況改善に向けた行動を期待するとすれば、役所ではなく政治家の方を動かさなければならないだろう。
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