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2010.07.18

「インセプション」

見事な奇想。それを十分に活用して普遍的なテーマを鋭く浮き彫りにした構成。そして主演の演技力。映画ってこういう風にも作れるんだ。以下ネタバレは読まずに観るのが吉。

話が始まった動機は、案外つまらないものだ。それは消えはしないが、次第に後退しながら、代わりに、仕事の依頼を引き受けた主人公の内面の話になっていく。しかもそれが、依頼の遂行と分かちがたく結びついていて、主人公のトラウマの克服と依頼の完遂をもつれさせながら見せていく。そのもつれ具合が何とも上手い。伏線を挿入するタイミングとその回収もいい。久しぶりに、最後に少し感動をおぼえた。

この感動は、おそらく、スローモーションの使い方に関係していると思う。人間の心の動きは速く、普通の物理現象はそれに比べてとても遅い。だから、普通ならほんの一瞬の目の動きや表情の変化で、こうした心の変化を表現するものだろうけれど、この映画ではその部分を、ある必然的な理由によって、スローモーション映像と同時進行で見せている。「巨人の星」で星飛雄馬が、1球投げるのに、26分を費やして、その間に瞳の中の炎あり背景で砕け散る波しぶきあり肉親の過去語りありのドラマが展開されるのと、同種のものを感じる。

もちろん、それだけではない。夢とかユートピアといったものへの憧れと執着、その末の悲劇、それを克服して現実に帰還する男への喝采、そうしたお決まりのものがないまぜになって、しかも表面上はまことに静かに、高いレベルで完結している。

ネタバレは無い方が楽しめると思うので、あえて何も書かないが、SF的な部分でのディテールの整合性を変に追求しなければ、これも間違いなく観て損のない一本。

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