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2010.03.22

「マイレージ・マイライフ」

失業者あふれるこのご時世にタイミングよく公開になった、解雇専門会社のやり手社員のお話。解雇という事象を仕事として扱う人物を材料に、現代人の仕事と家庭、ひとくくりにできなくなった生活を斬って見せる。以下ネタバレ。

というと、解雇される側を描くのかと思いきや、そうではない。解雇する側の視点から描く点は一貫している。このやり手社員が雇われている会社は、企業から請け負った従業員解雇通告を、なるべくストレスなく、訴訟や事件に発展させないように遂行する。厭な役割だが、普段は見られない人の様々な相貌が見える立場。ベテラン社員である主人公は、有名大学出の頭はいいが経験がない新人の教育係も兼ねて米国各地を飛び回る。

ベテランの方は、解雇される人の過去や家族なども視野にいれつつ、この災難を人生の再出発と前向きに捉えさせるモチベーションのプロなのだが、その本人自身は、家族もなく1年のほとんどを機上で過ごすいびつな人生を送っている。一方、新人の方は、対面による解雇通告というウェットな方法よりも、Webカメラを通したドライな解雇方法を推進する一方で、伝統的な家族観を持つ根は古風な人間。このちぐはぐ感が面白い。

被解雇者への接し方、話題の選び方を見ていれば、ベテランの方がはるかに人間というものをよく理解しているように見せておいて、実は、それは仕事上の技術に過ぎず、彼自身の人生観は正反対であるという矛盾を抱えながら、お話は進行する。これがうまい落とし所を見つけられるのかどうかに、観る側は興味をそそられる。あて馬的に挿入される、同業のベテラン女性との関係の深まりが、希望を深めさせる。挿入されるエピソードも、そうした方向をにおわせる。主人公もそう思ったはずだ。

それなのに、この無慈悲な展開。わかっていたはずだったのに。

ベテランの、上辺は華やかだが実は寂しい人生と、新人の、最初は青臭いが、成長してこのステップを卒業していく可能性に満ちた展開とが、終盤で対比される。それでもベテランは挫折感を押し隠し、新人の背中を押してやり、自分はこれまでどおり生きていくしかない。そうなのか? 最後に主人公がキャリーバッグから手を放してしまうシーンは暗示的だ。

「サンキュー・スモーキング」と「JUNO」のジェイソン・ライトマン監督、今回もテンポのよい語り口で楽しませてくれます。原作あり。

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