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2010.02.13

「おとうと」

じじばばの観客の多い劇場で、相変わらず艶のある黒髪が美しい吉永小百合を愛でつつ、ゆっくりした時間の流れを感じる映画。その年代の観客には受けがよさそう。以下ネタバレ。

出来の良い兄姉と、正反対にどうしようもない弟の、中年も過ぎて老年に差し掛かろうかというあたりの関わりを描いている。できの悪い弟をだれもが憎々しく思うような運びにした上で、「兄や姉にいいところを吸い取られてしまったようで、哀れである」という言い回しを登場させる。

世間は別に、この弟を大して差別もしていないだろうし、おそらくは身から出た錆がほとんどだろうけれども、それでも縁を切ることができない優しさと芯の強さを併せ持った姉の姿を、吉永小百合が好演。と書けば映画の感想としては収まりがよい。私の見方は少し違う。

心安く死ぬことが、こんなできの悪い人間にも可能であることを、描いてほしいという願望が、世間の側にはおそらくある。その要請のとおりに、弟は、一度は喧嘩別れした姉とその娘、婚約者、NPOの献身的な人々に看取られて、自ら決めたイメージのとおりに逝く。その辺りが、高年齢層の観客の涙をストレートに誘うところだ。

その意味で、この映画は、姉と弟の肉親の情を題材にしながら、実は、これからの日本人の、人の看取り方を示した映画といえる。よく勉強して、今後発生する大量のそれに備えましょう。

それにしても、スクリーンの中の吉永小百合は有無を言わさぬ壁のような強制力と圧迫感がある。悲しんでいてさえ、それは登場人物の弱さでなく強さを示してしまう。空前絶後の女優ということだけは、間違いない。
日常の場面での台詞の不自然さが、最後には、このオーラにぴったりに思えてくるから不思議だ。
演技は上手いとは言いがたいのに。

弟役の鶴瓶のダメ男ぶり、開き直ったときの憎々しさなどがよい。
姉の娘役に蒼井優は、まだ進歩の余地がありそう。吉永小百合と同じように綺麗な黒髪なのでがんばってほしいところ。本人の希望は知らないが、じじばばのアイドル路線は、ありかもしれない。競合も少なそうだし。

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