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2009.06.14

「インスタント沼」

タイトルを見ただけでは一体何の映画なのか不明。ただ、「おと・な・り」の麻生久美子がよかったので、それに釣られて見に行ったら、全然違うもう一人の、しかし紛れもない麻生久美子が見られて、案外よかった。公開終了の前週深夜の回で、観客は私ひとりだろうと思っていたら、あにはからんや席は半分ほど埋まっていて驚く。意外に口コミで評判が広がっているのかもしれない。以下ネタバレ。

中身は要するに、人生くよくよせず前向きに、気持の切り替え素早く。言いたいことは口に出して言う。弱いときは引け、強いときは断固押せ。嘘はいかん。という、ただそれくらいのことなので、観ればわかる。風間杜夫が演じる骨董屋のパチもん具合がよかったというだけにとどめたい。

麻生久美子だが、この人の「普通」を演じる力はすごい。引き合いに出して恐縮だが、たとえば竹内結子が離婚後一時期、市井の女の役を立て続けにやっていたけれど、どうも線が細くてうまくなかった。そのとき作り手側がイメージして実現できなかったのは、まさに麻生久美子が軽々と演っている、この感じなのではないか。他の登場人物たちのわざとらしさに比べて、その普通さは際立っているように思う。
もちろん、叫び声や金切り声などは普通にわざとらしいのだが、会話の中でちょっと相手に切り返すときの台詞の自然さなどは、アドリブで地を出しているとも思えるくらい。
こうなると、対照的にわざとらしい松坂慶子の変な母親ぶりも目立つ。すっかり恰幅もよくなって、母親役はこのところのはまり役になっている。

微妙にヤンキーっぽい感触を裏に隠しながら、雑誌が取り上げるような流行としてのそれではなく、衰退避けがたい日本の普通の風景としてのヤンキーを体現するのは、もしかすると麻生久美子、ということになるのかもしれない。ちと飛躍しすぎか。

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