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2009.05.31

「おと・な・り」

木賃アパートの薄い壁を隔てて、控え目な生活音が行き来する男女の気遣いと共感が気持ち良い、日本的な控え目な感性に溢れた良品。以下ネタバレ。


お話しはじっくりと進む。つづら折れの道を行くように、ターニングポイントへ行くまで次の展開が見えないあたりが、いかにも日本的。はじまりから後半も終わり頃まで、おとなりどうしの二人の日常と葛藤が、まるで無関係に進む。その間、二人が顔を合わせることはない、という一風変わった展開。不思議に思いながらも、二つのストーリーを楽しめてお得感がある。
それぞれの小ストーリーの結末で、それぞれに一歩大人になる瞬間に、壁を通して懐かしいメロディが重なり合うところが、この映画の白眉。ここであっさりエンディングに持って行ってもよかった。

この後はやや冗長な感じもするけれど、実際に二人を合わせるための単なる仕掛けという以上の意味を持たせているようだ。故郷と東京の二重構造、同窓の仲間への懐かしさ、寡黙な親の子に対する愛情、そうしたものを次々に見せて、二人の出会いの背景にしっかりした人間関係の網の目があることを意識させる。ヒロインのストーリーの中に登場する、地方出身のコンビニ店員が、故郷の人間関係と切り離されてしまっているのとは対照的だ。

ともあれ、普通に人間関係の中で育った二人がハッピーエンドに至るという、幸せ感いっぱいの終わり方で、安心して最後まで楽しめる。

映像的には、普通感がよく出ていて、お話しに合っていた。特にヒロイン役の麻生久美子の普通ぶりがよかった。印象に残る普通感というのは、なかなか出せるものではない。おそらく大多数の日本人にとって、親近感を感じられる、よい作品でした。

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