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2009.03.29

「ウォッチメン」

原作を全く知らないので、予告篇を見てもパンフレットを見ても、何の映画なのかさっぱりわからなかった。ただ、監督がザック・スナイダーということだけで観ることにしたのだが、期待を裏切らない出来。観て大正解。濃厚で異常な「真実の」世界を楽しめる。以下ネタバレ。

作品中に出てくる壁の落書きやちらりと映る新聞の見出しなどを追うと、より深く楽しめるのだそうだけど、原作も知らない英語も覚束ない私にはそこまでは無理。それでも、映像とストーリーだけでこの濃い世界の存在は強烈に立ち上がってくる。

お話し自体は、巷で騒がれているほど特別なものは感じられない。現実の米国の歴史上のトピックを使いながらパラレルワールドとして描いている点は、いわゆる「伝奇もの」の手法だし、描かれているヒーローたちも、やたらに強かったり超能力を持っていたりで、ヒーローの特技としては普通。
むしろ、彼らのイカレ具合の方が突出していて、この映画はそれで引っ張られているところがある。特にロールシャッハの果断な暴力と、その裏にある憎悪に歪んだ正義感が、全編をリードしている観がある。ほかのヒーロー達は、イカレているとはいっても、ロールシャッハに比べると、案外能天気だったりナイーブなところがあったりして、普通のヒーローに見える。オジマンディアスだけは、多少、ロールシャッハの狂気に近いところがあって、それが彼をしてこの計画の黒幕たらしめていると思える。
ロールシャッハと他のヒーローとの違いは、映画のラストにはっきり現れるのだが、これも、よくある結末といえばそうだ。

では何が凄いかといえば、巧みに映像を操るこの監督がつくりだした世界そのものだろう。それを味わうためにkそ、観客は映画館へ足を運ぶのだ。濃ゆい。あまりにも濃ゆい。

ところで、このお話しのフレームワーク、善人を装う誰かによる巧妙な世界の操作と真実の隠蔽、それを薄々知りつつ受け入れることと引き換えに得る束の間の安楽、そして、その馴れ合いを断固暴こうとする過剰な正義感とそれがもたらす破滅、こうした構図には、いろいろな具体例があてはまるけれど、直近の事例で言うと、知らずに踊らされていた金融・不動産バブルとその崩壊などがぴったりで、こそばゆい後味が残った。


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