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2009.02.01

「エレジー」

これは文句なく最高級の味わいある映画。一過性のパワーをもらったり、気分転換になったりという一芸的なものではなく、観ることで滋養がつくような作品。上映館は少ないようだけれど、大人なら観ておきたい、と大きく出ておこう。以下ネタバレ。

最初は、老いらくの恋を描いているのかと思って、多少興味本位もあって見に行った。出だしは期待に違わず、芸術学の老教授が彫像のように美しい女学生を誘い込んでねんごろな関係になるという艶聞。次は、恋愛を自由に楽しんできたはずの男の方が夢中になってしまい、独占欲や嫉妬に苦しむお決まりの展開。厳格な家庭で育った出自とは思えない、それなりに経験もある女から、その見苦しさを的確に見抜かれて、しょんぼりしたり焦ったりする老教授に、男として深く共感を覚える。

それほど夢中になっているのに、女の側の定石「家族に会ってほしい」、にどうしても応じることができず苦しんだ末に破局。切ない。
しかし、男は知らなかったのだ。女がどれほど真剣に男との愛を育んでいたのかを。


途中、老教授の親友で詩人の男との会話がたびたび挿入されるのだが、これがまたよい。男どうしの遊び仲間というものは、女にとっての家族と同様に、かけがえのないものだということがよく伝わってくる。

その親友も逝き、(これがまた皮肉屋らしく諧謔味にあふれた逝き方なのだが)、ひとり残った老教授の孤独が沁みる。

彼の長年の同棲者である女性経営者の存在も、このときは多少揺らぐのだが、やはり男の欠けたピースを埋めるものではない。


このまま終わってしまえば、この作品はちょっと面白い恋愛映画として消費されるだけなのだが、この後の最後の出来事とその結末が、それを許さない。どうなるかは映画館でのお楽しみ。人が寄り添って生きるとはどういうことか、それがよく表現されていた。

老教授を演じたベン・キングズレーの名演技には文句のつけようがない。ペネロペ・クルスの、初期の固い表情、恋人として美しさを開花させた様子、そして最後のエピソードでの様子、三段階の変貌は、お話しの筋を際立たせている。教授の親友を演じたデニス・ホッパーも、眼鏡の奥で妖しく光る目が怪演。そのほかにも、脇役がすべて高いレベルで映画の奥行きを広げている。

久々にじんわりくる、たいへんよい映画でした。

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