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2008.11.16

「イエスタデイズ」

昭和高度成長が色濃く香る美しくも切ないお話し、というだけなら陳腐だが、ちょっとしたトリックを使って、その中に平成男子を投げ込んで、新しさを出している。昭和の人にも平成の人にも観られるよい作品。以下ネタバレ。

親の心子知らず。この作品の背景にはそれがある。大人になる前の青年は、親に対して自分がどれほど大きな借りがあるか、親がどれほどのものを犠牲にして、そのひとつの生を生きてきたかということに、普通は気づかないものだ。青年期を過ぎて長く経ってからそれに気づいたときは既に遅く、ただ順送りに、次の世代へ、前の世代からの借りを返していくだけだ。

この作品は、時間を超えるという禁じ手を使って、年若い主人公にそれを気づかせることで、普通ならあり得ない感動を作り出している。その意味でこのお話しもまた、数多の同種のお話しと同じく、一種のファンタジーではある。終盤までは。

昭和の感覚をよく覚えている私は、途中までは、この作品は平成の若者からは拒否されるかもしれないと思いつつ観ていた。未来に漠とした希望があったあの頃と違って、今は予測できる不安が現実化するのを座して待っているような世の中だ。そんな空気を吸って育ってきた人たちが、この儚い神話を受け入れられるはずがない、と。

ところが作り手は、そのお伽噺の枠から一歩踏み出してしまう。美しくも悲しい神話の主であった女神のような女性の、その30年後の姿を、この作品は最後に見せて、普通に台詞まで言わせてしまうのだ。決して見栄えのする台詞ではないが、まさにその場で言葉にされるべきことを言ったことが、たいへん効果的だった。この踏み込みのお陰で、お話しは、単なる昭和へのノスタルジーではなく、れっきとした平成の今の物語となった。

上映スケジュールを見る限りでは、興行上はややお荷物扱いのような印象も受けるけれど、ぜひ若者にも観てほしい一本でした。

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