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2008.11.15

「ヤング@ハート」

「ヤング@ハート コーラス」という高齢者ばかりの歌唱団の活動を取材し、映画的な演出も加えて仕立てた面白い作品。歩くのもやっとの年寄りが、元気なところを見せようとしたり、威勢のいいことを言ったりするだけで、気持ちが豊かに大きくなるものだけど、この映画はその効果を最大限活用している。つくりもののアクション映画や恋愛映画に飽きた頃にちょうどよい、ハートウォーミングな一本。以下ネタバレ。

たとえば若者が、恋人の若すぎる死を悼ぶ歌を情感を込めて歌ったとしよう。それはそれで感動を呼ぶけれど、この映画はその上をいく。現実にコーラスの仲間が、ぽつぽつと死んでしまうのだ。1ヶ月前は一緒に歌っていた仲間が、先週、練習に来なかったと思ったら心臓発作で入院したと家族から知らせがあり、しばらくして、コンサートで発表する日の朝集まったバスの中で、彼が亡くなったとの知らせがもたらされる。残ったコーラス仲間達は、死を悲しむ歌詞を聴衆の前で歌うのだ。

そんな実話を映画で取り上げるなんてありだろうか。反則です。が、泣けます。

悲しいシーンも織り込みながら、しかし映画の基調はむしろ明るい。年寄りというものには、若者にはないある種の開き直りがある。やるだけのことはやってきた。残り少ないけれど行けるところまで行こう。そういう恬淡とした落ち着きがあって、若者の特徴であるがっついた感じがない。そういう人間は、見ているものに不思議な安らぎをもたらす。この映画の明るい感じは、そこから生まれているように思える。

出演している年寄り達の顔もいい。現役のうちは、人の顔は概ね仕事に大きく影響されるものだが、リタイアした後の人の顔というのは、もっと違うもので構成されている。もう間もなく訪れる永遠の安息が、大きく影響しているのかもしれない。これまで積み上げてきたなんでもない日常が昇華されてあのようになるのかもしれない。そんな様々な顔をひとうひとつアップでたっぷり見ることができる。

特に優れた箴言があるわけでもないのに、ひとつひとつの言葉が滲みる、よい映画でした。

そうそう、クライマックスのコンサートに来ていた、思春期前くらいの姉妹が、「歌っている人たちが自分で楽しんでいたのがよかった」と、礼儀正しく醒めたように言っていたのは付け加えておきたい。これは、子供にはわからない、また、わからないのが正しい、そういう映画なのです。

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