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2008.10.19

「イーグル・アイ」

いまやユビキタスな存在になった電子機器が、統一的な意図の元で悪用されると何が起こり得るかを、具体的で迫力ある映像で描いている。さらに、より深い懸念として、テロを口実にした監視社会が行き過ぎることで、米国の国是とも言うべき「自由」が侵害されることも示している。
「2001年宇宙の旅」は、宇宙船という閉じた系の中で、全ての機器を統一的に管理するコンピュータが、乗員である人間に害を成すというお話しだったが、いまやそれと同じ状況が、ここ自由の国アメリカで起きようとしている、という警告の映画。以下ネタバレ。


正直な感想をいえば、あまり目新しい着想は無い。要するにHAL9000やスカイネットの焼き直しで、どこかで見たような気がする映画。どの部分にも既視感があり、それら部分を繋いでみただけで、何か新しいものを付け加えることをしなかったため、全体にも既視感が行き渡って、これと同じものを実際に見たことがあるという確信を覚えさせる、変な映画。そう感じさせるのが作り手の意図なのだろうか。

とはいえ、この映画の警告は、多少真剣に受け止めてもいい。映画の中では、悪いのはコンピュータということにしているが、これを悪意を持った人間に置き換えてみると、なるほどぞっとする。例えば、監視カメラは犯罪抑止に効果があることになっているが、それを悪用すると何が起きるか、それを具体的に見ることができる。グーグルストリートビューのような偶然撮影された過去の写真よりも、継続的に映像を記録し続けている街の監視カメラのほうがずっと大きな害があるはずだが、その危険に対する指摘は社会の中で抑制されている。そうした憂うべき状況の中で、この映画は一定の価値を持つかもしれない。

こうしたシステムが悪意のある人間に操られるのは嫌なものだが、もっと悪いのは、正義を振りかざす人間がこうした力を手に入れてしまうことだ。正義などというものは人によって異なるのが普通で、にも関わらず正義の衣を纏うことで、他人にそれを強制してよいとの錯覚を引き起こす点で、かなり危険なしろものだ。それが、実効性のある強制力を手に入れるとなると、笑い話ではすまない。映画の中では、コンピュータが憲法を引き合いに出して自己正当化を行う場面で、この辺りを描く。

などなど考えると、つい憂鬱になるけど、そこを金のかかった映像で紛らわすのは、いつものハリウッド映画の手(笑)。カーアクションは景気がいい。コンピュータのコントロール室は、カミオカンデの内部を参考にしていそう。そのコンピュータを沈黙させる方法は、HAL9000のときとほぼ同じ。きっとほかにも、映画をたくさん見ている人には楽しいところがあるのだろうけど、教養や仕事でなく娯楽として映画を観ている私には、その辺はよくわからない。

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