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2008.08.31

「TOKYO!」

3本の短編を連ねた作品。それぞれ単独の作品としてみることも、相互に繋がりがあるように観ることもできそう。以下ネタバレ。

1本目は、人ひとりひとりに、目に見える「役割」を求め過ぎる東京という都市への批判。2本目は、東京が都会に似合わず閉鎖的であることに対する過激な異議申し立て。3本目は、引き篭もりが少数派から多数派になった東京で、引き篭もり先駆者が愛(性愛)の力で殻から脱するお話し。ごく普通に観るとそんなところだろうか。

いずれもテーマとしてはやや陳腐だが、それぞれ奇想を織り込んで観る側の興味をうまく引いた。

1本目では、人が徐々にあるモノに変化(へんげ)してしまう。モノが歳月を経て意思を持ち言葉と妖力を操るようになるのは日本の妖怪譚ではよくある話しだが、その反対というのはやや珍しいように思う。アポロンに追いかけられて月桂樹に姿を変えたダフネの話しくらいか。その変化の意外性が面白かった。この作品では、追いかけられてというよりは、捨てられ見放されて、というところが異なるけれど。
結局、表面的にはモノに変化した彼女は、たまたま拾われた男の家で、夢にまで見た勝手放題な生活を楽しむところで映画は終わる。これはあるいは、日本の都市における「妻」というものを象徴しているのかもしれない。最近どうも、そうでもなくなってきたとは思うけど。

2本目では、東京の同質空間に対する嫌悪が昂じて破壊衝動を炸裂させる怪人の話し。彼を捉えて死刑を宣告する人々に対して、彼は断固反対を唱える。爆弾で大勢の人を殺した彼にして、反省の言葉はない。死刑制度には当然反対。菊とかお札を食うのは象徴的な意味があるのだろうけど、ややはずしている感じ。東京人がいまのようであるのは、地味豊かな欧州の人には推し量り難い理由がそれなりにあると思う。

この作品では、怪人はかなり暴力的な手段に訴えてくるのだけど、そういえば今日の日経の「経済論壇」に面白い意見が紹介されていた。「そもそも人を踏みつけにしておいて、今度は逆に踏みつけられた側から反撃をくらうことを考えていないとすれば、あまりに考えが甘い」そりゃそうだ。次作はニューヨークが標的だそうだから期待しておこう。

3本目は、引き篭もり10年選手の彼が、ピザ配達の彼女の白いフトモモにくらりときて雲から落ちる、ではなかった、家から遂に外へ踏み出すというお話し。そういえば引き篭もりって一種の仙人みたいだなどと思ったりする。この作品は、お話しの展開点での「ボタン」の使い方がいかにも現代風で面白い。地震を物事の切っ掛けとして使っている点も、東京に固有の風土をうまく捉えている。

3本通してみると、理解できないものが身近に存在することを許さず何らかの社会的役割を無理にでも割り振ろうとする東京という都市の閉鎖性を糾弾し、かといってそれにへたに反撃すれば死刑の憂き目にさえ合いかねない非人道的な風土を指摘し、その両側の恐怖に板ばさみになった人々が引き篭もりに走るのは、むしろ当然であるけれども、その状況を打破するのはつまるところ愛であーる。
といったような映画なんでしょうか。どうなんでしょう。

特にお勧めはしないけれど、3本目は香川照之と竹中直人という濃ゆいひとたちにはさまれた蒼井優のこれまた濃ゆい存在感がよいです。

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