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2007.12.30

「再会の街で」

これは味わい深いよい映画。

ところで突然ですが警告です。この映画の日本語オフィシャルサイトの「ストーリー」を見てはいけません。いきなりネタバレをやらかしていて、こんな素晴らしい映画を危うく台無しにしかけている。その情報はお話しが進むにつれてもしや・・と思わせて、ちょうどよい頃合でやっぱり・・と腑に落ちる話しなのに。公式サイトだけでなく劇場サイトでの作品紹介でも公式サイトの文章をコピペしているようなので要注意。
私は幸い読まずに観にいってよかったが、すぐに削除してもらいたい。警告おわり。
で、以下ネタバレ(笑)。

 

この映画の登場人物には、ステレオタイプが少ないように見える。奇矯な人間ということではなくて、悩んだり揺れたりする普通の人間ということで、それがいい味に繋がっている。当初はかなりイカレタ人間に見えるチャーリーが、お話しが進むにつれて案外まともな面が見えてくるのが不思議。それは、大学時代のルームメイト、アランとの交流の中で見せる、男の自由(家族という重圧からの開放)への共感を切っ掛けに始まる。

観客は、アランの辛抱強さと包容力、善良さのおかげで、彼とともにそのプロセスを見ることができるから、チャーリーのイカレタ表層の下に、癒されない深い悲しみがあることがわかる。この悲しみを軸に、周囲の人間の様々な態様が交錯しながら描かれていって、興味が尽きない。

一番の理解者のはずでありながら、実は自分の都合が優先している義理の老夫婦、あるいは長年の友人だった会計士、傷を癒すどころか抉り出すことで利益を得ようとする老夫婦側の弁護士、チャーリーが閉ざした心を開く切っ掛けを作り出したセラピスト、チャーリー同様イカレタ表面の下に悲しみを隠している女患者、誰もが固有の背景や特質を持ち寄って、この作品世界を形作っている。

一見、狭雑物にも見える歯科医仲間のいざこざなども、アランが逆にチャーリーから煽てられて克服するエピソードがさりげなく入っていて、この二人の関係が、強者と弱者の一方的なものではないことがうまく描かれている。総じて、様々なエピソードが盛り込まれていながらそれぞれに必要十分な意味があり、無駄がない。

こうして、悲しみに対処する癒しの過程を慎重に描きながら、チャーリーの悲しみが実はあの歴史的事件に由来することを明かすことで、お話しは一気に一般性を帯びる。このあたりがまた上手い。最初からそれを持ち出してしまったら、観る側は無意識に記号化を行って、手垢の付いたフィルターを通してしか、この生の悲しみを感じることができなくなってしまっただろう。

この種明かしの後、観客はチャーリーという個人の生々しいお話しを見ていながら、あの事件で傷付いた全ての人とその周囲の人々についての話しとして受け止めてもいる、という深みのある構図にはめられることになる。
それでこそ、終盤の弁護士の浅薄さ、会計士の無力、判事の思慮深い言葉、あるいはチャーリーの癒しへの第一歩、そしてアランの家族愛の再認識、そういった全てが、いっそう深味を持つ。
監督と脚本家の力量というべきだろう。

最後に、家路に付くアランが、自由の象徴だったチャーリーのスケボーバイクで走り出すところは、この関わりを通して少し成長した彼ら全員の姿を象徴していて、なんとも印象に残る。

あの事件から7年経った。日本風に言えば七回忌を終えたといったところだ。米国人はどの程度立ち直っているのだろうか。この作品は、そろそろ前を向いて歩き出そうという呼びかけなのだろうか。


主演のアダム・サンドラー、ドン・チードルをはじめ、どの役者さんも非常にくっきりと人物を浮き出させていて、大変良かった。個人的には、癒しの女王リブ・タイラー様!のセラピスト役に満足。ふっくらの限界近くに来ているようなのが心配(笑)。

年の瀬にこんないい映画を見られて、大満足でした。

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