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2007.10.02

「題名のない子守唄」

乾いていながら人間らしい。そういう風に人を描いた、大人のための映画。こういう作品を「いい映画」と呼びたい。イタリア産のこの映画を観ると、日本は言うに及ばず米国の映画もかなり湿っぽいところがあることに気付かされる。
今年の十本の中に間違いなく入る一本。以下多少ネタバレ。

 

欧州の街へ行った折、長い歴史の重みを感じてひどく疲れを覚えた記憶がある。その重みとたぶん根を同じくする乾いた感性が、あると思う。私はこの作品を観ている間中ずっとそれを感じていた。ジュゼッペ・トルナトーレという監督はシチリアの人だそうだが、そういう土地柄なのだろうか。

この「乾いた」という言葉を、日本に住む私達は往々にして「機械的な」とか「非人間的な」と読み替える。この映画はしかし、極めて人間的な要素を扱いながら、乾いた感覚でそれを描くことができることを教えてくれる。欧州産の映画に見られることが多いようだから、あの土地の人にとっては馴染みのことなのかもしれない。日本からあまり出たことのない私はそこに魅かれる。
 

この映画を既成の分類に嵌めようとすれば、ミステリーとかスリラーとか言うことになるかもしれないが、そんな安易な捉え方をしたくない。確かにミステリの要素はあるが、それはこの監督が描きたいものを表現するために採った手法に過ぎないのだから。とはいえ、その手法がまた優れてスタイリッシュだから、そこだけを取り上げて評価することもできてしまうが、それではこの映画の価値を損なうことになる。
多くの優れた要素が絡み合っていて、分解して分析的に評価することが憚られる。それが完成度の高い作品というものの常だろう。

何を描いているかについては、それを後半遅くまで観る側に悟らせないのが、この監督の技量であり映画の価値でもあると思うので、書かずにおきたい。

ただ、観た人に何かを残してくれる一本である、とだけは書いておきたい。

 

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