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2007.05.01

東北行070501

今日は、白神山地、十二湖を目指す。
まずは田沢湖を半周して、金色の辰子像へ。正面から見るとぼんやりした印象の像だが、横顔はなかなかよい。金色が悪趣味かと思ったが、寒い季節の長いこの地に立つと、この金色が暖かくありがたく感じられる。こうした感覚は観光写真やテレビではわからないもののひとつだろう。

山間の道をとって北へ。途中、紙風船の町とか、またぎの里などを通過。朝早いので、せっかくの施設もまだ開いていない。
鷹巣に着く少し手前で東に折れて大館を目指す。きりたんぽを食うのが目的だ。途中、湯岱温泉というのがあるのでそこも目当て。小さな温泉に到着すると、丁度開業時間。すでに地元の年寄りがひとり先客で居る。湯につかりながらしばらく話しをする。
言葉がよく聞き取れないうえに、言葉の切れ目がわからないのでなかなか意味が取れない。先方も困ったのか、こちらがわからない顔をしているとぷいと横を向いてしまう。困った。

ふと思いついて、途中の道で見た桜の話しをしたら、にわかに話しが合いだした。すばらしき哉、共通の話題。このあたりはまだ3分咲きくらいとのこと。このさらに北の弘前は丁度満開の頃だが、寒い山間はやはり遅れがちのようだ。そこから、今年の作付けの話しやら、雪の少なさやら、いろいろな話しを聞けた。

それにしても、桜ひとつでこれほど話しが進むとは。日本人の定義をもし求められたなら、国歌とか国旗とかは脇に置いて、桜の開花時期や咲き具合で会話がはずむこと、という条件を第一にしたらどうか。春先しか使えないのがやや難点だが(笑)。
日本語? でもこのじいさまの日本語(一応)は最初ほとんど聞き取れなかったから、日本人の定義としては問題があると思うぞ(笑)。

 

温泉を出て大館へ。地図にものっているきりたんぽ屋へ行く。空いていたが座敷で相席。先客は、これも丁度退職のお年頃の男性客ひとり。話してみると、早期退職していまは悠々自適で北に南に旅行三昧らしい。国内の株式投資もして、それなりに儲けを出しているとのこと。自分で新しく商売はしないのか聞いてみたが、あまりその気はないらしい。
乳頭温泉で会った人もそうだが、退職後にもいろいろあるもんだ。

この人と、乳頭温泉で会った退職した人、そして先の温泉で話したじいさまの顔を見比べて思うのだが、団塊前の年代の顔には味があるものが少なくない。損得勘定より前に、何かを貫徹してきた顔というか。この年寄りの場合はそれが米作りだったのだろう。
ここで、米優遇の政策とか強力な農協と農政とかの存在は措く。単にこのじいさまは米をこの年まで誰に頼ることもなくつくり続けてきた、という事実に注目したい。
そこには、勤め人が勤め人生活をずっと送ってきたのとは、どこか違う、どちらかというと職人と同種の何かを見ることができる。米作り職人とでも言えばいいか。
勤め人との違いは、自分の生き方すべてに対する責任、だろうか。勤め人というものは、生き方そのものを他人に預けてしまって引き換えに気楽さを手に入れたところがあるのではないかと思う。仕事のきつさとは次元の異なる話しなのだ。
それが、年をとってからの自分の顔に現れる。人間、誤魔化しは効かないものだ。

きりたんぽは鳥のスープがうまい。まいたけ、小松菜、地鶏などとともにがつがつ食う。満腹したので、今度は一本北の街道を西へ。

途中、大太鼓の町というのがあり、道の駅と併設された観光センターがあったので、入ってみる。これが以外に面白かった。
大太鼓はギネス認定の世界一で、直径3.7mほどの勇壮なもの。祭りのときはこれを叩いて対抗戦をやるらしい。
そのほかにも世界の太鼓の数々が展示されていて、実際に叩いてみることもできる。知り合いの素人音楽家にジャンベを叩かせてもらったことを思い出しながらいろいろ遊ぶ。伝統的な太鼓以外に、現代的なものもあって、スプリングドラムというのには驚いた。太鼓の一方の皮の中心に、細長いスプリングが尻尾のように付いているものなのだが、これをもって振ると、スプリングがじゃらじゃらと音をたてて鞭のように揺れる。その音が太鼓の内部で共鳴して、遠雷そっくりの音になる。つい時間を忘れて遊んでしまった。

太鼓を堪能したあとは、さらにひたすら西へ、白神山中へと伸びる北行の道に入ってしばらくいくと、環境省がつくった案内センターがある。今日は定休日だが、事務室に居た管理人に聞いてみると、この道は2年前のがけ崩れで通行禁止になっているとのこと。がーん。すると十二湖へ行くには日本海へ一旦出てから回り込むことになる。
ブナの原生林を体験できると聞いてきたのだがと、さらに聞いてみると、いまはまだ雪が残っており、芽吹きもないので、もう少し暖かくなってからの方がよいとのお達し。
二重にがーん。
仕方なく引き返し、日本海、能代へと向かう。

能代からは海沿いに走って、十二湖へ。山あいを登っていきキャンプ場に到着。ついて驚いたのは、羽虫の多さ。バイクを止めたとたんにわっと寄ってくる。ガイドの人の話では、熱やガソリンの臭いにひかれてくるのではないかとのこと。テント設営の前に蚊取り線香を焚いたら、あっという間にどこかへ退散していった。煙が出る前に、いぐさの匂いがしただけで、すぐ居なくなったのには驚いた。よほど臭覚が敏感らしい。

ガイドの人に、白神岳へ登れるか聞いてみたところ、上の方はまだ雪とのこと。だめとは言わないのが微妙なところ。もうすこし情報収集が必要か。

設営後、国道へ戻って、小さな町でおそらくそこ一軒だけの寿司屋に入る。寿司を食べながら話しをしているうちに、白神岳に登りたい話しになって、おやじが知り合いの山岳ガイドに電話で聞いてくれた。「かんじきがいる」とのお達し。おまけに、予報によれば明日は雨。これは少々無理か。

それはそれとして、この寿司屋、何の変哲も無いのだが、まぐろがやけに旨い。近年これほどうまいまぐろは食っていない。(まあ、スーパーなんぞでいくら探してもそういうものは無いわけだけど)。
どこで仕入れているのだろう。日本海は海の幸の豊富なところだと聞くが、まぐろの水揚げなんてあったかな?

ともあれ、情報とうまい寿司の礼を言って出る。
見上げれば、目的の白神岳の雪をいただいた山頂が夕暮れの中に佇んでいる。これはやっぱりちと無理だな。

すっかり疲れて、寝る。


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