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2007.04.21

「ボンボン」

正直で善人で、でも肝は小さくて、儲け話しとなればそれなりに期待に顔を輝かす。そういう当たり前の小さな人の喜怒哀楽が感じられる映画。日ごろ仕事に追いまくられていたり陰謀をめぐらせたり計算高く生きていたりする向きには、普段と違う頭の部位を活性化してくれる、一種の癒し映画でもある。

因みに「わらしべ長者」という宣伝文句は、表面的には少し違うのだけど、よく考えるとなかなか的を射た評かもしれない。次々に売り買いを重ねながら利益を上げるというお話しではないので、誤解の無いように。以下ネタバレ。

 

自由になる時間を持つ、ということがどんなに大切か、この主人公を見ているとつくづく思う。出会いというのは何かが始まる切っ掛けだが、ガソリンスタンドで何十年も勤勉に働いていては、なかなかそうした出会いはないだろう。あったとしても、そこから次に繋がる行動を起こすことは難しい。

自由な時間のある人間なら「少しこれを調べてやろう」とか「試しにちょっとやってみよう」ということが比較的やりやすい。それがあって初めて、道とか運というものは開けるものだ。たとえ失敗しても、その自由な活動が短期的な結果にはつながらなかったというだけのことなのだし。

もし、勤め人のように時間を拘束されている人が、仕事を棚上げしてそんなリスクを冒せば、失敗したときは結構難儀なことになるだろう。もっとも、失敗によって当分の間自由な時間が手に入るかもしれないから、それはそれでいいことかもしれないのだけど(笑)。

この映画の主人公も、失業することで生まれた時間的な余裕が、当初は家に居づらいなどマイナスに作用しているのだけど、ふとした親切で手に入れた血統書付きの犬と出会ったことで、まるでその犬に手綱で引きずられるかのように、次々に自分の新しい道を見つけていくことになる。失業で手に入れたかけがえのない自由な時間を使って。

 

この映画で特筆すべきは、俳優と犬の表情。なーんともいえない味がある。一流の俳優さんが役作りをしたというのとはまったく違う。特に主人公の表情がよい。

それもそのはず、この映画の大半の出演者は、この映画が初出演だそう。監督は、出演者が自分の職業と同じものを演じることで生まれる真実味を大切にしたかったらしい。主役のファン・ビジェガスなどは、職業だけでなく本名もそのまま。映画製作会社の近くの駐車場にもう20年も勤務してきた。

その平凡で小さな人生を送ってきた彼が、映画の中で、犬のブリーダーという職業の存在を聞いて、実は結構儲かるらしいと生まれて初めて知ったときの、その表情といったら・・それはもう見てのお楽しみというしかない。

日頃、控えめな善人として生きてきて、自分でもそう思い込んでいた人が、「こりゃひょっとしてひょっとするかも」と思ったときの、欲でぎらついた表情。善人の皮の上に張り付いたガラスの目玉。何ともいえず人間らしくてよいです。

人間、欲が出始めるとそこに泣き笑いが生まれてくるようになる。この主人公のそれからがまさにそれ。ドッグショーで優勝できると吹き込まれたときのどきどきした感じとか、本当に優勝してしまって表彰されるときの誇らしげな感じとか、優勝犬にさっそく舞い込む種付け依頼の金額交渉を見守る心配そうな顔とか。それが生きてるってことだよ、と思わず声援を送りたくなる。

 

「わらしべ長者」という宣伝文句は、自由な時間を手に入れた主人公が、最初はほんの小さなことから少しづつ試してみて、うまくいくごとに次第に大きなことに手を出していく様子を言ったものだろうと思う。その意味でこの評はあたっている。

高度に知的で責任ある生活を送ってはいるものの、所詮は他人様に給料をもらう身に過ぎないことに気疲れしているような人には、とってもお勧めの一本。

とはいえ、これを見て変な考えを起こして人生棒に振っても責任は持ちません。
・・それはそれでいいんじゃない?(笑)

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