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2007.02.26

「世界最速のインディアン」

細かいことにくよくよせず、しかし人の機微をよく弁え、危険を恐れず、したいように生きる。そういう快男児(快老人?)を描いた映画。随所で思わず拍手したくなる価値ある作品。「快男児」はもはや死語だが、この作品中ではリアルに生きている。以下ネタバレ。

 

お話しが目指す目標は単純で、そこへ向けて真っ直ぐ進む。のだけど、主人公の彼が行く先々で人々と交わすコミュニケーション(笑)の味わいがよい。「コミュニケーション」に(笑)が付いている理由は、観てのお楽しみ。

彼の辞書にはまるで「困った」という言葉がないようだ。いろいろと持ち上がる課題を、次々に何とかしていくのだけど、その切り抜け方を通して見える、楽観主義、メカニックとしての腕前、頑固さ、惑いとためらいの少なさ、そしてなにより明るくて壁をつくらない人間性が、この作品を光らせている。お話しの展開が出来過ぎてるのじゃない? と思わなくも無いけれど、こんなキャラクタなら、実際にあったのかもと思わせる。マッチョな力強さではなく、素朴な逞しさというか。

なんだか形容詞が多いな(笑)。でも、べた褒めしたくなるのは事実。


はるばるやってきた、彼が「聖地」と呼ぶ目的地のレース場で、参加者から"Sportsmanship of the Year"に選ばれるのが、ひとつのクライマックス。さわやかに嬉しくなる。でも、この映画はもちろんそれだけでは終わらない。

もうひとつの最後のクライマックスは、彼のバイクがスピードをぐんぐん上げて前人未到の領域に差し掛かるところから先にある。
ここまではスポーツマンシップで来た。しかしここから先は、彼を彼たらしめている形容しがたい衝動の本領発揮だ。

振り返るとここまでの道中でも、それは彼のさまざまな言動の中に少しづつ散りばめられていたかもしれない。幼くして亡くなった双子の弟の影が彼の中にはあって、この作品の味わい深さは、そのお陰でもあるだろう。

それが、このラストで存在を主張する。たぶん。

実は、映画はその点をほとんど語らず、ただライダーとバイクを描写するだけに止めているから、これは私の思い込みかもしれない。だが私はそのように観た。

あの世の弟はこう言ったかもしれない。「ここまでおいで、もう少し。」
そして彼は、自分のその片割れに向かって不敵に牙を剥くのだ。

最高。

このタフな老人は、ついに長年の夢だった世界最速記録を塗り替え、その後転倒しながらも大事無く、故郷の町に凱旋する。

たいへんよい後味の、気持ちが明るくなる映画。誰にでもお勧め。

 

 

[追記]
牙を剥くのではなく、祈ったのかもしれない。
どちらとも決めがたいところ。

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