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2007.01.14

「雷の季節の終わりに」

舞台設定が興味深い。「夜市」「風の古道」と同様、複数の似て非なる世界と、その間を行き来する人間とを配置している。
この長編ではさらに、不思議な天上の存在が新たに加わり重要な位置を占めるほか、登場人物も二つの世界をまたがる因縁を背負う。

作者は、この舞台装置を借りながら、現実の社会にもある表と裏を隠喩を使いながら様々に描いており、一連の出来事の中に現実を思わせる鋭い言葉が埋め込まれている。読む側はこれを空想と現実との狭間で転がしながら味わうことになる。

全体の筋書きも悪くない。登場人物の過去現在、二つの異なる世界という時空の二軸をうまく使って奥行きを出している。

お話しの締めくくりはあっさりしているが、それがかえってこのお話しで伝えたいことを浮かび上がらせる。

この物語は、読み手の現実と重なる箴言集として読み味わうのがよい。
読んでいるうちにあっという間に時が流れる、得難い一冊。

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