「イカとクジラ」
この映画は、わからない。
離婚という現象を通じて、夫婦というものの難しさを描いているらしいことはわかる。子供に与える影響とか、夫、妻、それぞれ自身への影響、あるいは、家族共同体内で曖昧に処理されていたことが、共同体でなくなることでどれほど煩わしい問題を生むか、など。
それらを、本音丸出しで描いている。普通、つくりものたる映画ではそういう風には描かないのじゃないか、というくらいに。見ているほうは、目を背けるか赤面するかというところだろう。
そして、問題山積のまま映画は終わる。かに見える。
一瞬、夫婦の縁りが戻りそうに見せて、そうはしない。そんな出来合いのハッピーエンドなんかいらない、とでもいうように。
イカ、ネタバレ。
このお話しの中で、多少変化したのは、手元不如意という現実にいやおうなく直面する夫と、その父を崇拝していた長男だろうか。夫(父)は、自分の弱さをついに認めざるを得なくなり、それを見た長男は、偶像が崩れるのを感じると同時に、何かを・・・掴んだだろうか。
そう思いたくなるのが、筋書きというものに馴らされた観客側だが、博物館の巨大イカとクジラが格闘する張りぼての前で、彼が何かを掴んだのかどうかは、正直なところわからない。
イカとクジラ?
確かに、ともに文学博士であり著名な作家である父と母は、息子から見たらまるで巨大な海の生き物のような存在だ。その二人の偉大で巨大な存在は、誰の目にも触れることの無い深海で、いったいどんな闘争を繰り広げているのだろう。
映画は、この二人、いや二匹が絡み合いもつれ合う様を表した安っぽい像の前に立ち尽くす長男の後姿で終わる。終わり方だけは、映画全体を総括した、なかなかにくい演出だ。
夫婦の問題で悩んでいるなら、観てもいいのかもしれない。
観た結果、破局に突き進むことになっても、それはそれでひとつの人生というものだろう(笑)。
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