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2006.11.18

「トゥモロー・ワールド」

大人の世界にはいろいろ事情や主張があって複雑だけど、それはそれ。赤ん坊ってやっぱりいいよねー、という最強の普遍的価値観を、銃弾と血しぶきの只中に厳かに出現させた、今年一番の感動的な作品。これはもう泣けます。小さな命に祝福あれ。

以下ネタバレ。

冒頭から最後のそのシーンに至る直前まで、かなり入念に今の世相を反映する手順をしっかり踏んでいる。イスラムの人たちが置かれることになった立場とその主張の核心、マイノリティや経済力の無い国の人たちの悲惨。それに手を差し伸べる恵まれた側の人たちとの溝。そういったものを、決してのめり込まず、短いシーンと練り上げたセリフで描き出している。英国からは世界がそういう風に見えているのかということが伝わってくる気がする。同時に、英国人らしいウィットや正義感を代弁する人物を織り込むことも忘れていない。

それゆえに、子供が生まれなくなるという荒唐無稽な設定だけを除けば、かなりリアリティのある近未来の像とも受け取れる。あまり嬉しい像ではないけれど。

作り手は、そうした絶望が垂れ込める世界を背景として十分描いた上で、天を向いて元気に怒りの泣き声を上げる赤ん坊というものをそこに置いて、作品を完成させている。
これで感動するなという方が無理。


現実にはもちろん、テロは赤ん坊と大人を区別したりはしない。それは作中の「フィッシュ」という非合法な集団が暗示している。それだからこそ、陰謀でフィッシュのリーダーになった男が、追い詰められて漏らす二つの矛盾した台詞は印象に残る。彼の立場からすれば十分すぎるほどの理があり、根の深い葛藤があるのだろう。

私達日本人は比較的、大人の中に残るイノセンスを許容しているところがあると思うけど、理性に高い地位を与える西洋の人間にとっては、この葛藤は大きいのではないか。この映画は最後にそこに焦点を合わせる。
結論は、当然ながら赤ん坊の勝ちなのだ。彼に関わった大人たちはことごとく死んでいくわけだが、それもまあ仕方が無いねと思わせる何かが、赤ん坊というものには生来備わっているかのようだ。


大人の都合と見栄の狭間で死に追いやられる子供まで出しているあの国やこの国の人たちは、もしこの映画を観る機会を得たならば、一体何を想うのだろうか。

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