「上海の伯爵夫人」
こじんまりしているが、きちんとまとまった感じの小品。登場人物の描き分けが割とよくできている印象。
脚本を書いたカズオ・イシグロは英国の作家。英国という国は近代勃興の境目で活躍しただけあって、近代の前と後を公平に見ることができるのかもしれない。このお話しも、近代前の支配階級であるロシア人貴族と、近代後を代表する若い国家アメリカの元外交官とを、公平な目で見ているように思う。同時に、日本という国家が欧米列強をキャッチアップする立ち位置も醒めた目で見ていて、比較的公平な目で評価しているように見えた。
さらにこのお話しには、没落した元伯爵家の隣人として、ある重要な人物も描かれている。彼は欧米の作品中ではたいてい嫌われ役として描かれてきたと思うのだけど、この映画の中では、古い時代が新しい時代に場を明け渡す過渡期においても根底では変わらない人間の善い本質-たくましさ-を体現している。世界中を放浪する宿命に置かれた彼の民族の別な一面を、初めて見せられる思いがした。
映画の出来としては普通だし、元外交官の趣味の世界には私は興味が持てないけれど、かの隣人の描き方には得るものがあった。時間があるときには試しに観てみるのもいい一本。
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