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2006.10.14

16ブロック

コンパクトで上質な映画。

警察の留置所からたった16ブロック先の法廷までの狭い空間に展開を限定したことで、大作アクション映画のようなダイナミックな場面転換を封じている。それゆえ観る側は却って、場面展開に目を奪われること無く、お話しの核心に常に触れていることが出来る。それがコンパクトで密度のある印象をもたらしている。

警官の悪事を法廷で証言する予定の証人を挟んだ、護送する刑事と阻止しようとする悪徳刑事のつばぜりあいというありふれた設定。追跡劇の中で使われる小道具類やトリックはいずれもお馴染みで、快適な展開とさえ言える。
ところが、その流れの深層に妙にいわくのありそうな雰囲気を微かに漂わせて、お話しは進む。その妙な空気の落ち着きどころがいい。そこに私は「上質」という言葉を充てたい。以下ネタバレ。

 

この種の映画は、殺すか殺されるかのやりとりになだれ込むことも多いけど、そうなると観客は、目先を生き延びたり罠を仕掛けたりのテクニック、あるいは、正面きった激突の緊張の方に注目してしまう。そうなると、登場人物は互いの価値観などかなぐり捨てて生存のために獰猛に戦わざるを得なくなる。

でも、この映画はそうなっていない。妙に気脈の通じるやり取りが双方の間に交わされる。そこには、ささやかな悪と、僅かに残った善との葛藤がある。どちらも相手を滅ぼさずには済まないようなものではなく、妥協や共存の余地を感じさせる。そのための共通の敵のイメージにも事欠かない。

それでも、護送役の刑事は、自分の中に残った僅かな小さな善を選ぶことになる。最初は「何かが目覚めた」かのように意識せずに。最後には自分の選択に確信を持って。

その間のプロセスに、この映画の良さがある思う。

善き心というものは、そんなに大袈裟なものではないのだ。小悪人だった証人が、警官に包囲されたバスの中で自分の夢を小さな人質の女の子に語るときに、その良さが凝縮されていると思う。「誕生日専門のケーキ屋は、毎日が誕生日で毎日がハッピーなんだ」と。善とか幸福というのは、そういう小さなところに宿るものなのだ。

 

泣けるとか心温まるとかの決まり文句とは少し違う、いいお話しを聞いたなあ、という感覚が余韻に残る一本。

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Posted by: e-アフィリ | 2006.10.14 at 03:11 PM

アフィリエイトのお誘い、ありがとうございます。
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ってわざわざお断りのコメントを書くおいらは律儀なのか暇なのか(笑)。

Posted by: hski | 2006.10.14 at 06:35 PM

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