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2006.09.02

キンキーブーツ

キウェテル・イジョフォー扮するカリスマ・ドラッグクイーンのパワフルな舞台が要所を締める、ノリがよくて元気の出る楽しい映画。

お話しは、片田舎の経営不振の工場を舞台に、生き残りをかけて新機軸を導入しようとする気弱だが必死の若社長と、親の代からの保守的な従業員との葛藤から始まって、やがて相互理解と協力により成功へ突き進むという、これ以上ない正統的な枠組になっている。
それだけではさすがに古びているので、ドラッグクイーンという現代的な要素を工場再生のアドバイザーに据えて、周囲から浮いている者どうしの勇気と共闘の姿の方にむしろ重心を置いている。これが結構いい塩梅になっている。


などと書くと、まるですました映画評みたい(笑)だけど、これがなんと実話だというから嬉しい。多少脚色はあるにしても、もうダメポと思われていた古びた工場が、工夫と努力で生き生きと蘇る話しが嫌いな人はいないだろう。階級がどうとかいう小難しい評論なんか関係ない。英国でも大ウケする道理だ。

この映画には、いいシーンがたくさんあるのだけど、特に好まれそうなものを選ぶとすれば、ひとつは、工場の女性若手従業員ローレンが言うセリフ「「何ができるっていうんだ」なんて言ってる暇があったら×××!」のところ。景気の良し悪しとか環境変化を経営不振の言い訳にしてしまうことは少なくないと思うけど、この若々しいセリフはそれを真っ向から切り捨ててくれる。すっぱり切られました(笑)。

うろ覚えの中からもうひとつ挙げると、同じローレンの「人の価値は、他の人にどんな思いを残したかで決まる」というセリフ。ちょっとくさいが悪くない。


その他に私は、脇役の職人の反応がいいと思った。伝統的な一生ものの紳士靴を長く作ってきた年寄りの職人が、新しく示されたkinky(変態趣味の)bootsのデサイン画を見て、たちどころに可能な材料と構造を答えながら、もう製造方法に心を走らせているところ。

職人にとっては、その靴がファッションとして社会的にどう見られているかはどうでもよくて、人間の体重を支えて安定させること、つまり、彼の技術を最大限生かしてモノにすることの方が、大きな関心事なのだ。保守的な観念に囚われて新しいものに抵抗するのは、彼のような技術者ではなくて、実は別の何かなのだということがわかる。

 

いまのところ上映館は数館だけのようだけど、もっとたくさんの人に観てほしい映画。ハリウッド映画に飽きた頃に、映画の面白さを再認識させてくれます。

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