狩人と犬 最後の旅
原題は"The last trapper"。この"trap"という言葉は"trap line"という熟語として作中に頻繁に出てくる。主人公ノーマンは実在の狩人だが、その狩とは銃で獣を狩るよりはむしろ罠を仕掛けるスタイルが主であるらしい。
内容に特異な主張は何もない。山で実際に生きる人の生き様を淡々と描く中で、「必要なだけ獲る」「自分はいずれ死ぬが命は受け継がれる」、「狩人は生態系のバランスを保つのに一役買っている」など、この種のお話しでは定型となった主張が盛り込まれている。森林の伐採が進む現代社会との葛藤もおなじみ。
そんな中で、都市住まいの私にとっては意外に聞こえる言葉があった。
「自然を崇拝しないが感謝する」。普段、あまり自然に接することなく暮らしていると、自然に対して崇拝、畏敬などの感情を抱きがちだ。そこへ投げこまれる「崇拝するのではない」という狩人の言葉には、現実のバランス感覚が読み取れてはっとする。真に「自然の一部になって暮らす」とはそうしたものなのだろう。
映画は、犬そりの新しい一員として加わったシベリアンハスキーの成長に焦点をあてながら、カナディアンロッキーの厳しい冬を中心に、狩人の1年間を美しい映像とともに淡々と描く。生死の境も何度も行き来しているはずだが、特につくられた感じもしない。そこに描かれているのは、生きるためにこそ生きるあたりまえの狩人の自然な姿だ。
「今年度の売上げ○○%増」とか、「起業して10年後には上場企業の社長に」など、目的意識をもって生きることが人間の正しい生き方であるとする、一見もっともらしい主張がはびこるこの盲目の時代に、狩人の自然で淡々とした生き方を見て、静かに自省してみることも、また必要なことではないかと、久しぶりに思ったのだった。
そういう意味で、劇的につくられてはいないが、よい映画です。
もちろん、人口の膨張する現代で、全員が全員そんな生き方をしたら、世界(自然)のキャパシティを越えかねないという醒めた指摘はあるだろうけど。(それこそが現状を盲目的に肯定する罠でもあるのだが)
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