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2006.04.22

Vフォー・ヴェンデッタ

そのにやけたお面は何? の第一印象だが、観てみるとこれがなかなかいい。上出来の映画。少なくとも、Matrix Revolutions の10倍はよく出来ている。
メッセージ性の面だけでなく、これがなんと、エンターテイメントとして、よく出来ていると思うですよ。やや不謹慎ながら。


まず、現実世界の背景をちょっと書く。
Vのモデルになったガイ・フォークスという実在のGuyがどんな人物かよくは知らないのだけど、「ガイ・フォークス・デイ」が、由来としてはイングランド国王と国教会側の命拾いを祝う日でありながら、カトリック側にとっては記憶すべき宿怨(vendetta)の日であるところが、このお話しの多面性を窺わせる。

火薬陰謀事件というのが1605年だというから、30年戦争が始まった1618年のほぼ同時代。この時代既に北アイルランドはイングランドに激しく抵抗していて、現代までに到っている。世の中に様々な対立があるのはいまと変わらないけど、軍隊という暴力装置が割と気安く他国へ暴れに行ったりしていた頃。いまのわしらの感覚では推し量れないところがあるかもしれない。宗派と国家、王様や商人が入り乱れて、政府どころか国も転覆できるし、必要ならすべきという時代。
てことくらいまでは、ネットですぐに調べられるのだからいい時代になったもんだ。

原作コミックの方は、サッチャー政権のときに書かれたそうだから、背景にはIRAの活動がイメージされていたのだろう。IRAのテロを正当化する意味もあったのかもしれない。わしら普段あまり意識しないけど、サッチャー政権というのは超保守で、かなり警察国家的な政策をとっていたらしい。もっとも 1980年代の対IRA強硬策の発端は、IRAによるイングランド王室メンバー暗殺事件らしいし、サッチャー自身も爆弾テロの標的になって瓦礫の下から危機一髪救出されるなんてこともあったらしいから、どっちもどっち。
詳しくはここここで。

と、現実世界の背景についてはここまで。


さて、そういうかなり血生臭い背景を持ちながらも、この映画は、エンタテイメントとしても、とっても楽しめるのであります。

Vのテロリストらしからぬコミカルなところ、独裁者のステレオタイプなところ、悪役それぞれのいかにもな行動、体制側でありながら良心的というか職務に忠実なおまわりさん。すべてが芝居じみた可笑しさを内に秘めていて、テロを巡る現実の深刻さを和らげている。その感覚は脚本にも見られて、Vと並ぶ主人公のイヴィーが自分に目覚める過程にはちょっとしたトリックがあるのだけど、かなり観る側をほっとさせている。

この映画は、テロ実行犯側の暴力を肯定するように描かれていて、その点は批判的に観られるかもしれない。しかし考えてみるとわしらは、正義の味方(例えば水戸黄門)が暴力に訴えて(助さん格さん)悪を懲らしめる映画やお話を、何の抵抗もなく受け入れているのだった。(風車の屋七は秘密警察ね(笑))

それが、主人公の立場が「今の政府に反対」に変わっただけで、暴力を否定的に考えるのはおかしいのでわないですか? という危険な問いかけが、この映画の隠れた罠だ(笑)。
実際、IRAにしてもイラクで暴れている人たちにしても、そういう意識はあるに違いない。

本来はおそらくIRAをイメージして作られたであろうこのお話しが、911テロの影響で公開延期されたにもかかわらず、イラクの惨状が報道されるいまになって公開されるのは、かえってタイムリー、という皮肉もある。
 

まあ、理屈は抜きにして、観て面白いし、調べようと思えばいろいろ手掛かりはあるし、噛むほどに味わいのある、良く出来た映画だと、わしは思うです。

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