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2006.02.09

IPによる通信と放送の融合

「通信と放送融合を探る<中> 世界に先駆け日本型を」 日経本紙 経済教室

スタンフォード日本センター研究所長の中村伊知哉さんの寄稿
<上>を読んでないのだが、この<中>単独でも面白い。

「融合」は日本の問題であり制度の問題である
の部分はそのとおりだ。
日本の放送局がハード(通信路)とソフト(コンテンツ制作)の両機能を持つことが原則だ。
という部分は、正しく「原則だった」というべきだろう。今後もそうすべきかどうかについては議論があるはずだ。なぜなら、ハードとソフトを分離してそれぞれ競争環境に置いている米国では、通信路の供給者としていわゆるIT企業が台頭し、新陳代謝を促しているのに対して、日本ではこの点で、Yahoo!が健闘してはいるが、やや停滞が見られるからだ。

中村さんはこのあたりを、電気通信役務利用放送法により通信を使って放送を行うことができるようになったことを取り上げて、世界的にも先駆的としているが、しかし同時に書いているように、日本の映像コンテンツの大半はテレビを通じて流されており、そのテレビが利用している地上波、BSには同法は適用されない。つまり、外見上先駆的な法律ができたように見えて、その内実はあまり変わっておらず、相変わらず映像コンテンツは規制業界の管理下に事実上置かれているのだ。ワンセグ放送もこの延長でしかない。

これを、新しいコンテンツ提供者の育成によって乗り越えることは可能かもしれないが、時間も資本もかかる。むしろ現有のコンテンツを公共財に近い扱いにして開放することが、手っ取り早い。

中村さんが、NHKが公共的な受信料と税金とを使って作り上げてきた膨大なコンテンツに言及して、こう言っている点は興味深い。

むしろ、NHKにネット配信を義務付け、資産の有効活用と新市場の開拓を担わせるという考えも成り立つ。
勝手な想像なのだが、NHKにとってもそれは本望なのではないか。
NHKを見ているような人間は、何につけても一家言あって発言が好きな人ばかりのはず(笑)だから、多地点双方向コミュニケーションの仕組みを仕込んでおけば、労せずして放送を核にした良質なコミュニティ(ユーザによるコンテンツ)を立ち上げられそうだ。それを使って放送と通信の融合の先頭を走れるのではないか。それは「みなさまのNHK」を実現する容易確実な方法だと思うのだけど。
 
 
さて、中村さんの稿の最後は、IPによる伝送路の区分の撤廃について触れている。
IP化による通信網の設計思想の変化は、通信と放送の伝送路の区分を撤廃することを求める。コンテンツに関する規律も、通信と放送という単純な区分より、消費者保護、プライバシー保護などきめ細かい多元的な社会要請に応える仕組みが必要だ。
私は、IPを使って、秘密性を求められる通信と、発信の責任を問われる放送を両立させることが可能だと思う。実装方法には2つの方向性がある。

ひとつは、原則、匿名性を保持できる伝送方式を基本として、発信者責任が求められる場合には、その上のレイヤで発信者情報を流通させるもの。もうひとつは逆に、原則として発信者情報をコンテンツと不可分とする伝送方式を基本として、匿名が望ましい場合には、発信者情報を隠蔽するものだ。

市井の人間である私は、前者が好ましいと思うのだが、その方向へ世の中が進んでいるのかどうか、多少心もとなくはある。IPv6の導入・普及の際に、原理主義者の策謀により(笑)後者になったりすることが、万一にも起こらないように祈ることしきりの今日この頃です。

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