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2005.12.30

天空の草原のナンサ

和む。

「らくだの涙」をつくった監督の二作目。捨て犬の問題とか、近代的なプラスチック文明の脆さとか、宗教的な昔話のうっとうしさ、選挙の話題などを盛り込んで、草原の国の現在を描いた・・はずなのだろうか。

原題は"The cave of a yellow dog"。黄色い犬の故事を引いて輪廻転生を説いた逸話がお話しの底流にありそうなのだが、遠く離れたここ日本で見ると、そんな説教じみたことは霞んで、ひたすら天空に近い、人の少ない国の生活を描いた和み映画に変容する。
彼らに比べて、わしらは何と激烈な日々をなにげに送っていることでしょう(笑)。人口密度が高い社会の宿命か。

登場する家族の3人のまだ小さい子供の様子にもたっぷり時間が割かれていて、それだけでも微笑ましい。長女の子でもまだ10歳くらいだろうか。それなのに馬をあやつり、家事の手伝いをし、生き生きとしている。牛糞集めの失敗など、観客の暖かい笑いを誘う。

とはいえ、その和やかな空気の中にも不気味なものが2点登場していた。ひとつは、ご近所(といっても、見晴るかす草原を馬で駆けていった先の住人だが)の老婆が語る、黄色い犬の故事。もうひとつは、父が町で土産に買ってきた毒々しい緑色に光る目のピンク色の犬のおもちゃ。

私はその2つを、草原の生活をおびやかす人間社会の脅迫観念の象徴と観た。前者は妙に宗教じみた熱を呼び込むものであり、後者は言わずと知れた文明の毒だ。
その、天空の生活にそぐわない熱と毒が、人間と飼い犬の関係という一応設定された軸に多少の奥行きをもたらしてはいる。

輪廻を説く年寄りの昔話は、飼い犬を捨てるように示唆するけれど、犬を飼うのは、やっぱり素直にいいことだ。そして、目が点滅するような気味の悪いおもちゃよりも、一緒に暮らす生きている犬のほうが、比較にならないくらいよいことはいうまでもない。

小難しく言えば、一種の病気ともいうべきヒトの熱と毒を多少は体験させながらも、多くの生き物の中でシンプルに生きることを教えるのは、子供の情操教育上はとてもよいことだ、というあたりだろうか。

そして、子供の心にとっていいことなら、大人にとってもたぶんいいことなのだ。この映画を観て和みを感じるのは、それがいいことである証だと思う。


私は、最近身の回りに増えている、妙にヤワで神経質そうな犬たちと、それを猫かわいがりするヒトの様子に「病気」を感じてしまうけれど、この映画には、それとは違う、犬と人と空と大地のありようが描かれていると思った。

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