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2005.12.10

SAYURI

勘違いの日本趣味を見せられるだろうかとあまり期待せずに行ったのだけど、嬉しい誤算。心に沁みるところがある映画でした。筋書きもさりながら、構成のバランスに不思議と品のよさが感じられる。ハリウッドもこういう映画が作れるんだ。といってもスピルバーグだから、これくらいは当然か。以下ネタバレあります。


この映画は、芸者というものが一種の職能だったということを教えてくれる。この頃世間を騒がせている建築士などと同様、特殊な技能をもって社会に価値を提供する人々だ。だから、売春をテーマに下層社会の情念を描く種類の映画とは違う。

ただ、その職能が、人の情念に触れる領域に近いために、大工などの職人とは違って、職能人の人生に微妙な陰影を落とすのだ。

主人公の千代は、その職能の部分を、都で一番の芸者さゆりの名前で毅然として全うしながら、千代としての人生までも飲み込まれないように生きた。この映画は、その二重の在り様を、さゆりに惹かれる2人の男に象徴させて描いている。

お話しは、置屋の日常や商売敵との競争、華やかな芸者の演技などを絡めながら進み、飽きる暇がない。特に、さゆりが主演する劇中劇は、映画と演劇を混ぜ合わせたような、迫力あるシーンに撮れている。芸者というものが、実際にもあんな劇を演じるのかどうかは知らないが、ここだけでも観る価値はある。チャン・ツィイー、お見事。

ツィイーのほかにも、アジアの俳優が参集する配役はなかなかよかった。再婚が決まった渡辺謙は存在感あり。豆葉役のミシェル・ヨーはマレーシア人だけど、まるで日本人に見える。中国人のコン・リーも同様。そしてやっぱり役所広司、桃井かおりがいるおかげで、これが「日本の映画」に見えてくるのがすばらしい。スピルバーグの慧眼なのか、ロブ・マーシャル監督の腕なのか。

さゆりと2人の男との関わりが、結局どのように決着するか、それは観てのお楽しみだ。劇場は比較的空いていたけど、観て損はない映画だと思う。


[追記]
そうそう、花街の都市計画的視点からの解説が、こちらにあります。

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