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2005.08.14

技術と芸術は選択の問題

技術は消費されるが芸術は賞賛される

このブログの書き手は、医者としてある程度キャリアを積んだところにいて、他の医療分野へ「転職(?)」するかどうか悩んでおられるようだ。他のエントリを読んだ限りで、勝手にその前提を置かせていただくことにしよう。間違っていたらごめんなさい。

さて、上のエントリは、医療分野における[芸術的]医師と[技術的]医師について、その違いと、置かれる立場を説明した上で、両者を対等な選択肢と捉えている。他の分野にも応用が利くいい考えだと思うので、メモ。


まず、芸術家と技術者の違いを説明するためにデュシャンを取り上げて

* 芸術家は作品にサインをする。「泉」には、R・MUTT と、デュシャンが記したサインが入っている。
* デュシャンは、買った便器に「泉」という題名をつけた。単なる工業製品であっても、芸術家が名前を付けると、それは「作品」となる。
* 名の知れた芸術家が便器を出品し、それが会場から拒否され、撤去されたという一連の事件は、それ自体が「アート」として賞賛された。芸術は、作品ではなくそれに伴う物語にも価値が見出される。
の3点を芸術家に特有のものとしている。その上で、
* ネットワークの力で、社会の変化を加速させようとする一般医
* 個人のサインの力、物語の力で、社会の変化の速度を抑えて延命をはかる専門医
という二者、技術者(的医師)と芸術家(的医師)という二つの選択肢を、対等に扱っている。
 
 
この話しは、例えば企業の組織形態を考える場合にもよく似ている。
普通より少し優秀な比較的多数の集団で構成される組織を前者になぞらえ、少数の飛びぬけた芸術家的頭脳集団とその他大勢の普通の人たちで構成される組織を後者に擬することができるだろう。

上のエントリの重要なところは、その両者を対等な選択肢としているところだ。
 
 
自らを省みると、芸術家的なものを技術者的なものより上位に置きたがる習性が、ともすればあったと思う。若い頃関わっていた建築設計の分野ではとりわけ、それが当然とされていたから、その思想の影響から自由になるのに随分時間が掛かった。
いまでも、「Only Oneを目指す」などと形を変えて、この思想は私を誘惑する(笑)。

しかし、両者は対等だ。確かにそうだ。そして世の中には両方が混在する余地が十分にある。どちらが優勢な分野で生きていくかは、選択の問題なのだ。

そして私はといえば、「ネットワークの力で社会の変化を加速させようとする分野で、芸術家的能力を発揮する」という、おいしいとこどりにも見える(笑)方策で、どうにかこうにか生き延びようと企んでいる。

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Comments

いえね減点されたんですが、実はもひとつ過ちを犯してまして。眼鏡等の項目は見逃されたor気づかれなかった訳で、そこはそれそれ。

両立しています。
技を見るというのは美を感じ取れていないわけで、美(芸)を見るというのは技を認識できていないわけで。未熟さを恥じるべきです。

とかね(笑)
いつも失礼しました、では。

Posted by: -den | 2005.08.15 11:59 AM

未熟さを素直に恥じます(笑)。

技の行き着いた先に美を発見することもあり、美に魅せられて技を磨くこともあり、といったところでしょうか。

ちと優等生的過ぎますか・・(笑)

Posted by: hski | 2005.08.15 08:23 PM

取り上げていただいてありがとうございます。
件のブログの作者です。
このエントリーの芸術家/技術者云々は、書き出した当初は本当はもっと
芸術性を謳っていいはずの医者と、その芸術性を絶対に認めない事務方
との対立を考えていたのですが、気がついたら結論がねじ曲がっていたという…。
個人的には、芸術家を目指して挫折したので、ならば自分のような
凡人にも住み心地のいい病院にするにはどうすればいいのかな、というのが
目下のテーマです。

Posted by: medtoolz | 2005.08.15 10:37 PM

挫折は芸の肥やしといいますから(笑)。

私も、自分が生き易い世の中に周りを変えてやろう、という問題意識の持ち方を、よくします。
その一方で、他人の役に立つことが人が生きていることの意味かもしれん、と思ったりもします。

この辺りはいつも微妙に揺れていて定まることがありません。

ま、未熟を恥じるということで(笑)。

Posted by: hski | 2005.08.16 07:35 AM

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