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2005.07.03

ネット社会の自由と安全保障

少々遅ればせながら読んでみた。目次はこんな感じ。
第1章 日本の情報化の進展と、ネットワーク社会の政治およびセキュリティ面への影響について
第2章 中国の不正サイバー活動の現状および対策
第3章 中国のネットワークの自由と国の安全
第4章 米国におけるセキュリティの現状と論争
第5章 米国における「自由」と「安全」・「秩序」
    -米国の保守主義における亀裂-
第6章 ネットワーク、ネット闘争、未来への闘い

斜め読みだったこともあって、とりわけ面白い本とは思わなかったけど、少しメモ。

情報革命の本質は知識革命であり、この社会変化は人と人の関係性のネットワークを強化し、かつ、その間主体的=間主観的なネットワークに膨大な情報と知識の「ソーシャル・キャピタル」を積み上げることになる。その具体的な例がある種のワールド・ワイド・ウェブである。このような情報と人々のネットワークに深く関与することはとりわけ若者たちの間に内面的な指針ではなく、より外在的な知識に行動の基準を求めるという意味で(18~19世紀的な)「近代的個人」とは異なる人間像を作り出すかもしれない。
ここはかなり私的には「イタイ」ところ。丁度、この分け方の境界領域にいるので、ぴくりとくる。
情報化に伴う日本社会の構造的変化については、他のいくつかの先進産業諸国と同じように、19世紀的なナショナリズムを統合の基軸とする近代化としての国民国家の段階を終了したという意味で、「ポスト・モダン」的な状況にある。
(注)「このことは、ナショナリズムが、今日、世界の政治においてあまり目立たないとか、ナショナリズム運動がかつてよりも少なくなっていることを意味しているわけではない。私が論じているのは、むしろ、明らかに目立っているにもかかわらず、歴史的に見てナショナリズムは重要ではなくなりつつあるということである。19世紀や20世紀の初頭であれば、ナショナリズムは、いわばグローバルな政治的綱領といえたかもしれないが、今やまったくそうではない。」E.J.ホブズボーム著、浜林正夫他訳「ナショナリズムの歴史と現在」

注にある、ナショナリズムは重要でなくなりつつある、というところが肝。
ところで、国内統制のために、その重要でなくなりつつあるものを持ち出さざるを得なくなっているお隣の国については、どう考えたらいいのか。発展段階が違う、というのがありがちな答えだけれど、少し違うようにも思う。

その中国に関する2章は、歴史を追って事例を挙げ分類することに多くのページを割いていて、考察は浅いように思う。ハッカーをいくつかに分類しており、その中で「紅客」というグループは他国には見られない「愛国と団結を理念とする」集団として取り上げられていた。その辺りは、グローバリズムが称揚される中での中国の特異性を表しているように思えた。

米国の2章も米国内の政治思想の歴史を追っていて、ネットについて考えることが、政治や歴史の考察と関係が深いことを窺わせる。保守主義の台頭と亀裂について多く書かれていた。

まとめの1章は、ネット闘争(あまり好きではない言葉)の形態や手法について書かれていた。中で、「リーダーレス」で「群集的」な行動と、それを方向付ける「物語」と「ドクトリン」の役割、活動の土壌となる「社会的支持」、特に「個人的な靭帯」についての言及が重要か。例として、地雷廃絶国際キャンペーンに始まって、自動車文化に対する抗議行動である自転車愛好家の集団走行、法輪功と呼ばれる集団の行動、あるいはDDos攻撃に至るまで、目的を問わず見受けられるネット的な活動が取り上げられている。また、ネット活動の弱点についても軽く触れられているが、これは強みの裏返しだからとくに取り上げる必要もないだろう。

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