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2004.06.09

匿名性と反社会的情報の削除機能は両立する

  放流された情報が削除不可能であることは、確かに問題です。高木さんのblogで、この指摘があり、利用者が自身の判断で、情報を削除できる機能の必要性を説いています。この意見は傾聴に値すると思います。
  一方、削除機能だけでなく、放流元を特定できる機能も付けるべき、という意見もあるようです。私はこちらには反対です。それは匿名性を脅かすからです。

P2Pの仕組みをつくるときは、

  1.情報の出所は追跡できない
  2.各ノードにおいて情報を削除することができる

の2つの原則を守ることにしてはどうでしょうか。

  原則1は言うまでもありません。
  原則2により、情報は、それが削除されるべきと思うノードの近傍からは時間とともに消えていき、情報が残されるべきと思うノードの周辺に残ることになると思います。これは、情報の生き残り方として、とても自然な感じがします。

  この2つの原則によって、P2Pネットワークの匿名性を保ちながら、反社会的な情報の生息域を押さえ込むことができるのではないかと思います。

  ちなみに、反社会的情報を完全に撲滅しようとすることは、あまりうまいやり方とは言えません。問題ない程度に押さえ込めれば、それがコスト的にも精神衛生的にも、そして多様性の確保の点からも、いいのではないかと思います。

(発展的に次の記事に続きます)


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[追記]2004.06.11
  「圏外からのひとこと」経由で知った、崎山さんの記事「技術者の倫理を問う」の中で、高木さんの記事「市民の安全を深刻に害し得る装置としてのWinny」には多くの嘘があることが指摘されています。

  私は、同じ記事の中で

IPv6を使うなどして、ひとつのコンピュータで多数のIPアドレスを保有し、アプリケーションごとに別々のソースアドレスを使用することで解決できる。これが、将来の理想的なプライバシー維持型消費者向けインターネット環境であろう。
という部分を見て、これは嘘ではないかなあと思っています。さらに、技術者がこの程度の単純な勘違いをするとは思えないので、故意に嘘を言っているのだろうかという印象を受けました。また、同氏の別の記事「ポジティブキャンペーンが必要なのか」を見ると、高木さんという方は、政治的なキャンペーンに興味があるタイプの技術者なのかという印象を受けます。もちろん、いずれも私の主観的な印象に過ぎません。

  しかし、高木さんという方の思想や行為については棚上げして、純粋にこの方の主張にある「放流された情報が削除不能であることは、問題があるのではないか」という点に注目すれば、それは一理あると私は思うのです。

 
 
 
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[追記2]2004.06.14
  上記の追記について高木さんに記事の中で取り上げていただきました。私の考えを順に書くと、以下のようになります。

1.私は、P2Pの仕組みにおいて匿名性が失われることには反対です。
2.そのために、「IPアドレスを固定でなくする」方法が有効であるなら、検討に値します。
3.個人が使うIPアドレスの数を増やしたり、個人が複数のアドレスを使いまわしたりするだけでは、IPアドレスから個人を特定することの妨げにはならないと私は思います。単に数が増えただけで、固定アドレスであることに変わりはないからです。
4.上記本文中で触れた高木さんの記事では、「IPv6を使うなどして、ひとつのコンピュータで多数のIPアドレスを保有し、アプリケーションごとに別々のソースアドレスを使用することで解決できる。」と言い切っています。私は、それは違うのではないかと思いました。IPv4、IPv6のいずれかに関わらず、固定アドレスであればIPアドレスから個人を特定することはできます。本質は、アドレスが固定であるか否かであって、使えるアドレスの数ではないと思うのです。IPv6を使ったからといって、匿名性を確保することにはなりません。
5.むしろ話は逆かもしれません。IPv6が普及することで、もし、プロバイダによるアドレスの動的割り当てが廃止されれば、ネットは固定アドレスだけで運用されるようになるかもしれません。IPv6の普及が、ネットから匿名性を奪うことにつながりかねないのです。
6.高木さんも別の記事「2月8日の日記」の中では、「ログイン前とログイン後で異なるIPアドレスを使う必要」などに言及されていることから、ご自身もこの問題を意識はされているようですが、具体的な解決方法はまだお持ちではないように読めます。単に技術的に目処が立っていないだけでなく、社会的に、解決方法を普及・定着させる方法も、記事からは窺えません。「解決できる」との言い切りは早過ぎると思います。
 
 
  ここまでで、高木さんご自身も、IPv6を使うなどしてIPアドレスの数を増やすことでは、IPアドレスから個人を特定することを防げないこと、について自覚されていることがわかりますので、「IPv6を使うなどして・・・解決できる」と言い切ってしまったのはやや行き過ぎと思います。正しくは「IPアドレスを固定でなくするなどして・・・」と言うところではなかったかと思います。
  一方、その言い切りに対して、私が「嘘ではないか」とした言い方も言い過ぎでした。「論点がずれている」とでもするべきでした。
 
 
さて、この[追記2]における私の主張を簡単にまとめます。

  IPv6は一般の新聞でも取り上げられるなど、社会の関心もそれなりに高いようです。そのような状況の中で、高木さんの主張を読んだ人達が、「IPv6を使えば匿名性は確保できるのかぁ。それはよかった」という誤った認識を持ってしまいかねないことは、匿名性を確保したい立場からは好ましくありません。なぜなら、IPv6が普及していく過程で、匿名性を確保する手段についての検討がなおざりになり、結果として匿名性がなし崩しに失われていくおそれがあるからです。

  高木さんがもし、P2P(やネット)には匿名による情報発信という選択肢も残すべきだとお考えならば、上記のような誤った認識が広まることがないように留意していただければありがたいです。
 
 
 
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[追記3]2004.06.15
高木さんの記事で、再度取り上げていただきましたので、それについての私の考えを書きます。

1.発信者匿名性をどうするかについて。
  高木さんが言われる、受信者匿名性と発信者匿名性を分けて考えるアイデアは、以前拝読して、よい気付きをいただきました。また、高木さんの主張が、受信者の匿名性は肯定、発信者の匿名性は否定であることも、その時読み取っています。それはひとつの見識であると思います。
  一方私は、情報の受発信を実名でするか匿名でするかは、受発信者が都度選択できることが望ましいと考えています。その理由は以前の2つの記事に書いたとおりです。
Winny作者の逮捕 まとめ
匿名性の意味

  それぞれに主張のあることであり、この話はここで一旦終わりにしたいと思います。 
 
 
2.IPv6は匿名性を脅かすかどうかについて
  私の主張は当初から、IPv6は匿名性を脅かすということで一貫しています。
  一方、高木さんも、IPv6を通常想定されている方法で使えば、プライバシーを損ねるとお考えであることが、今回確認できました。
  そうである以上、これについての私の主張は、[追記2]の最後に書いたことを繰り返すだけです。IPv6を使えば匿名性を確保できるなどという、事実とは逆の、誤った考えを広めないよう、留意していただければと思います。

この議論も、私の方はこれで終わりにします。
 
 
 
  さて、素人の私にとって、このやりとりは、いろいろなことを理解することができて有益でした。お付き合いくださった高木さんと、崎山さん(経緯からすれば、私が巻き込んでしまった恰好で、すみません)にお礼申し上げます。

  また、このやりとりに関心を持ってくださった皆さん、お疲れ様でした。崎山さんと高木さんのやりとりなど読まれて、かつてのfjやパソコン通信の「フレーム」が、blog時代にも持ち越されるのかと、暗澹とした気分になられたかもしれませんが、その件はまた別の機会に譲りたく思います。

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