2021.10.24

「機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ」

NETFLIXで見る。

ガンダムといえば最初のガンダムくらいしか知らないのだが、その印象は、泥臭く青臭い少年たちが、戦争の中を足掻きながら生き延びていく物語、という感じだった。

それに比べて本作は、あまりに垢抜け過ぎている。台詞もキザで芝居じみていて好きになれない。普通の会話でそんな言い方はしないだろう。リアリティなし。

そして国籍不明の固有名詞の多さ。普通人の私にはさっぱりわからない。失礼を承知で言わせてもらえば、オタな人たちの脳内妄想が結実したのではないかと思う。やれやれ。

とはいえ、いいところもある。ああいった大きさの金属の塊がどの程度の質感なのか、大口径のレーザー兵器がどの程度のエネルギーを発散するのかという辺りが、足元で逃げ惑う人間たちと対比することで上手く描けていた。重い・熱いが伝わる。

それ以外は、ドラマとしても締まりがなく、アクションでもないし、見どころがない。たとえ劇場でこれを見ても、意味不明としか思わなかっただろう。

たぶん、この辺りの架空の歴史を知っていて初めて楽しめるものなんでしょうか。私には難しすぎました。

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2021.10.18

「DUNE/デューン 砂の惑星」

格調高く仕上がっていて、身じろぎもせずに見ました。2時間半という長さを全く感じない完成度の高さ。

お話は典型的な貴種漂流譚で安定感抜群。そして、DUNEを独特なものにしている特異な世界の設定とディテールの数々が、重厚で美しい映像に結実している。物語の主役達はもちろんのこと、憎むべき悪役でさえ、ある種の洗練、歴史の重みを湛えている。他と比較するのも失礼ながら、例えばスターウォーズの安っぽいディテールに比べて、圧倒的な格の違いを見せつけている。舞台が砂漠で、単一の色調のグラデーションで彩られているのも、この洗練に一役買っている。それをあやまたずに取り出して視覚化してくれたヴィルヌーブ、よくやってくれました。

ただ、これを小説の流れに沿ってシリーズ化するのは、少し怖い気もする。読んではいないけれど、ざっと検索すると、話が飛びすぎているようだから。もし続編を作ろうとすれば、原作にはないアイデアをかなり盛り込むか、いっそ外伝のような位置づけにする必要があるだろうか。

期待半分惧れ半分で見守りたいと思います。

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「最後の決闘裁判」

一般受けはしないかもしれないけれど、興味深く観ました。
冒頭と結末を決闘の始まりと終わりで挟んで、中の大部分を3層のサンドイッチにしています。

その3層では、中世フランスで起きた婦女暴行事件が、決着を求めて決闘裁判に至る過程を、当事者3人それぞれの視点で繰り返し3回描くという面白い構成になっています。

3回は、夫、間男、妻の順で第1章から第3章まで章立てされています。第1、2章では、富と権力、社会的認知を巡る、よくある男どうしの嫉妬や軋轢の話が中心ですが、第3章へ入ると、狭い男社会から、女の日常も含んだ世界へと視野が広がり、人としての尊厳を認められない女という立場からの男達への抗議という形に、話の相が移っていくのが刺激的です。

この3回は全く同じではありません。例えば、台詞の中のIをWeに変えて、夫婦の意識のすれ違いを表していたり、見交わす視線のニュアンスを微妙に変えて、本人の心の裡と、他の2人の受け止め方との相違を見せたりと、役者の演技力も最大限に活用して、なかなか凝ったことをやっています。

そのくらいの微妙な違いなら、行き違いで済むのですが、もっと大きく違っているところもあります。例えば負け戦から帰還した主を迎えに出た妻が、夫をハグしたのか、それとも夫が妻の露出度の高い装いに腹を立てて無視したのか、2人のパートではっきり食い違っています。人は自分に都合のいいように記憶を改竄するものだという皮肉が込められているかのようです。

こうして、人の記憶の曖昧さと主観的な見方の食い違いとの相乗作用を見せつけながら、件の事件が本当はどうだったのか、合意の上の不貞だったのか、それとも女の意思を無視した凌辱だったのか、作品はそれにまつわる様々な相を問うてきます。

中でも、この種の微妙な事件に対して、同じ女という立場からどう見るのかについて、渦中の女性の姑と友人を通して語らせているのが辛辣です。さらに、公正な裁判を受けるために事件を公にしたことで、女性が様々なセカンドレイプに晒されることも描いていて、これが史実のとおりだとすれば、今も昔もこの種の話の構造に変わりはないことを示しています。

3章を見終わって、映像は再び冒頭の決闘シーンの続きへ戻り、激闘の末に、夫が間男を組み敷いて告白しろと叫ぶのに対して、間男の方も、強姦はしていないと叫び返しています。

この事件では、行為があったこと自体は誰も否定していません。それが女性の同意の上だったのかそうでないのかが問われています。その答えは、女性の心の裡にしか存在しない。そして、心持ちも記憶も、後からいかようにでも改竄され得る。作り手はそう描いているようにも見えます。

舞台は中世であっても、現代の同種の事件に通じる普遍性がそこにあります。

決闘に決着がついた後、臨席していた当の女性が、闘技場に集まった観衆に向ける醒めたまなざしは、この事件を興味本位でしか見ない烏合の衆に対する、沈黙の非難を含んでいます。作り手が締めくくりに描きたかったのはそれかもしれません。


史実によれば、この夫は数年後に戦死し、妻は再婚せず女主人として裕福で幸せに暮らしたそうです。

怒れる夫の名誉のために半分以上は巻き込まれるような形で、しかし残りの半分はおそらく自身の意志で、決闘裁判というセンセーションを巻き起こしたこの女性が、後半生を幸せに生きたのであれば、幸いというべきでしょうか。

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2021.10.11

「由宇子の天秤」

見ているうちに襟を正して座り直すような、非凡な問題作。はじめのうちはよくあるマスコミ批判、学校批判なのだが、批判的な立場に立っている善人のドキュメンタリー監督が、身内の不始末で当事者の立場に巻き込まれることになったとき、それを等身大の問題としてどう感じ行動するかを描いている。

主人公は、善人らしく問題に向き合い、できる限り手を差し伸べ、理想と現実を両睨みしながら、問題を穏便に鎮静化させようとするのだが、見通しの甘さもあって、現実に手酷く裏切られたあげく、結局は最悪の破局を招いてしまう。

当の本人は、他人事の事件を追う立場からは真実の伝え手として振る舞う一方で、自分の身近な問題については、全く逆に、真実を隠蔽し、ことなかれで済まそうとするのだ。その2つの立場は、「善人」という視点から見るといずれも至極真っ当で、まるで矛盾を感じさせない。本作が提起していることの真の恐ろしさがそこにある。主人公が真摯であればあるほどに、問題は重くのしかかり、解決を難しくしているのが悲劇的だ。

幸か不幸か、ここに出てくる未成年を取り巻く課題を、私は身近に感じたことはない。ときどきニュースで見かければ、他人事としてありきたりな批判に軽く頷く程度でしかない。

けれども、人様の子供を預かるにあたって、どういうことに気を付けなければならないかについては、深く同意できる。


困っている人に手を差し伸べるには、簡単そうに見えても相応の力量が必要であること、とりわけ人間観察においては、過信は禁物であること、相手の人生を丸抱えする覚悟がないのなら、行動は自分の軸足を崩さない範囲ですること、など、本作から読み取るべき点は多い。

最も肝心なことは、自分が天秤の担い手であるなどと決して勘違いしないことだろうか。人は自分にできることしかできないのだから。

本年ここまでで、最も刺激的で深みのある憂鬱な作品でした。

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2021.10.10

「プリズナーズ・オブ・ゴーストランド」

予告だけでは何のことやらわからず見に行ってみて、ぶっとびました。なんですかこのアングラ劇団みたいなノリと悪趣味で露骨な暗喩は。
客席を見回すと、床屋で政治談義が好きそうな高齢者ばかり。情弱でした。はめられましたよ。

まあ、暗喩には当たってると思うところも、違うと思うところもありましたが、ここで示されている反米的でステロタイプな世界の図式と臆病な日本人像を作り手が提示したかったらしいことは了解しました。

胸糞悪いです。なぜかというと、国際感覚のないアメリカ人から見た日本というキッチュな存在が、そのアメリカ人の頭の中ではこういうふうになっているだろうという日本人側の空想、それはどうせこんなもんだろう?という日本人への侮蔑を感じたからです。複雑なのです。

作中で描かれる閉塞を打破するのは、結局外国人です。日本人と見立てた俳優は大勢登場するのに、それは皆、救いを待つだけの受動的な存在で、救世主たるヒーローは外国人なのです。馬鹿にしてますよね。

それでもまあ見てよかったとは思います。半分くらいは当たってますから。お薦めはしません。


本作といい、「ミナマタ」といい、ハリウッドの衣を被せてニッポンに自省を迫る風な映画が、この時期に折り重なって公開されるというのは、どういう動きなんでしょうか。

コメントの中には、監督は4年前には構想していたような話もあるけど、その頃はコロナはなかったし、中国の在り様もその後急速に変わってきていて、そのあたり、軌道修正しなくてよかったんでしょうか。

それにしてもニコラスケイジ、役を選ばないというのは本当だったんですね。いや、いいんですけどね。

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2021.10.01

「007/ノー・タイム・トゥ・ダイ」

さようならジェームズ・ボンド。
ボンド、特にダニエル・クレイグのボンドの、悲しい過去を背負って真面目にタフに、人のため愛のために生きる男の、集大成のような作品。よい出来です。

秘密兵器とかお色気とかは一応出てくるもののかなり控えめで、代わって、暮れゆく夕日で満たされたような渋い場面が多くなっています。

何より、遊びではない愛憎があって、ダニエル・クレイグ版が他のボンドシリーズと違うところをじっくり見せてくれます。他のボンドのようなスノッブなところがなく、私は好みでした。

それも、これで見納めです。長い間ありがとう。

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2021.09.30

「クーリエ:最高機密の運び屋」

キューバ危機といえば。自分が生まれるより少し前の話。観ているうちに、そういえば20世紀の半ばというのはこういう感覚が底流にあったのだったなあと親の話などから思い出す。米ソ冷戦という激しく対立する世界の構造が支配的だった時代だ。

いまから思うと、イデオロギーなどというものでそこまで激しく相手を憎まなくてもと思うけれど、その時代の渦中にいればそうは思わないものなのだろう。

本作は、そんな政治的対立の行き過ぎによって、自分の身近な家族が死の危険に晒されるのをなんとしても防ごうという人々の決死の行動とその代償を描いている。

彼らの行動が、危機の回避に与るところ大であったのは疑いないのだろうけれど、映画後半で描かれるその代償は後味の悪いものだ。市民的な立場からの勇敢な行いが、国家という非人間的なものに曳き潰される様が、かなりの時間を使って描かれる。

その悲惨な描写も終わり近くになって、国家の意思に抗って行動した双方の国の二人の人間の友情が、肉体的にはぼろぼろになりながらも、煌めきを見せる場面がある。囚われの英国人が看守に引きずっていかれながら、いずれ処刑されるであろうソ連の友人に、"You did it!"と何度も嬉しそうに叫ぶのだ。尋問室の隣でこれを聞いていたソ連の諜報関係者のやるせない様子を見れば、ソ連の人たちも、こんな世の中を早く終わらせたいと思っていたのだろうと思えて、それが本作の救いになっている。

過酷な時代にあって、命を代償に輝いた人たちのお話でした。
こういう世の中に逆戻りしないでほしいと切に願います。

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2021.09.27

「虫籠のカガステル」

NETFLIXで2020年2月に配信開始の作品。全12話

基本的には吸血鬼やゾンビものと同様、人間が異形に変化して人を喰らう設定のもとにお話が展開する。それだけでいい話になる素地は十分だけれど、本作は加えて、虫に変化しない体質の人だけの世を作ろうとする勢力、人と虫との中間の存在、虫たちを統べる女王の存在など、面白さが5割増しくらいになっている。人と怪物との葛藤は既に普通の要素になり、その上で何を描くかという問いに、本作はひとつの回答を与えている。

前半は、巨大な虫の描写を交えて目を惹きつけながらも、そんな環境下でも息づく家庭的な雰囲気で進んでいく。それが、少女の覚醒と共に一気に急展開を始めて、わずか1日かそこいらの時間の中に、濃密な世界観と巨大な陰謀と政治勢力どうしのつばぜり合いとが投げ込まれ、最後まで一気に進む。

説明的な台詞が多いのは、この絡み合ったたくさんの要素をうまく処理するには必須だったのだろう。それがあまり気にならないのは、脚本の良さのおかげだろうか。

ひとつ惜しいと思ったのは、登場人物の絵柄が若すぎると思えるところ。主人公の少女はもう少し大人の設定でもよかったと思う。ジャパニメーション全体に言える傾向だが、そろそろ考え直してもいいのではないか。高齢化も進んでいることだし(笑)。

ともあれ、早回しで一気見しても面白さが保たれる良作でした。

 

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2021.09.20

「マスカレード・ナイト」

久しぶりに見る麻生久美子、よかったです。冷たい美人。嘘で塗りこめられた仮面の下の一片の誠。それが目的で見に行ったようなものだけど、作品としてはそこには焦点を当てず、むしろホテルマンと刑事との価値観の相違と止揚を中心に据えてきた。それはそれで前向きだという評価はできる。

東野圭吾原作の作品は、以前は結構面白いと思っていた。それは、本作では脇役扱いになった悲劇の方に焦点が当たっていたからだ。けれども本作は、どちらかというとTVっぽいつくりで、明るく前向きな未来に話を持って行っている。

それで、どうもコロナ以降、こういうものにピンとこなくなってしまっている自分に気付いたりする。映画としてはもちろんよくできているけれど、この前向きな感じの中に、つくりものの匂いがしてしまって、素直に喜べない。

一例をあげると、クライマックスのシーン。腕時計の遅れという伏線が回収されるんだろうなという予想が早々についてしまう稚拙さは措いておくとしても、刑事が扉を開けた後の行動がおかしすぎる。秒を争う展開の中で、あそこでは、祭壇にダッシュで駆け寄って状況判断、行動するべき場面だろう。入口で立ち止まるのはどうみてもおかしい。作り手が観客(読者)の心情をこの程度だろうと勝手に斟酌して、さあここは皆さん悲しんでいただく場面ですよといわんばかりの演出で、鼻につく。テレビ臭がするとでも言えばいいだろうか。

そういう上から目線の下手な演出に拒否反応が出てしまうのは、コロナで人の生き死にを身近に感じるようになった影響だと思うのだ。時代は変わりつつあるけれど、頭を切り替えられない作り手の作品は陳腐に映ってしまう。

まあ、そもそも高級ホテルなんてものに縁がないから、そういう世界もあるのかね、という目を養うにはよかったのかもしれない。

 

※そもそも、コロナを小ネタに使っているのに、登場人物全員マスクのマの字もしていないって、リアリティゼロですよ。作り手にすれば、非常に悩ましいところだよなあ。。

 

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「GATE 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり」

NETFLIX
シーズン1全24話

米国で米軍のかっこいいところを描いた作品はたくさんあるけど、日本で自衛隊のかっこいいところを描いた作品は少ない。戦国自衛隊とかだろうか。なんとなく正面切って持ち上げてはいけないような風潮がいまだにある。

本作は、そこを打破している。

本音を言うと、自衛隊とドラゴンが大バトルするのを期待して見た。それはもちろん多少あるものの、むしろ、二次元彼女たちと自衛官の絡みでストーリーが出来ているという怪作になっている。

基本は異世界異種族美少女な厨二全開の作風だ。その世界観の上に自衛隊が国外へ出ていくときの課題や葛藤を乗せている。

とはいうものの、結局は、現場自衛官や外交官の、よく言えば男気の発露、悪く言えば感情的な暴走で問題解決しているところは、まあ空想映画だから、エンタメとしてはそういうことになるのだろう。

そのほか種々視聴者へのサービスも怠らず、よい仕上がりでした。

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