2022.05.16

「シン・ウルトラマン」

うむ。総集編でしたね。

TVアニメなどを映画化する際に採用される手法だと思いました。話がとぎれとぎれで映画としてはいまひとつ、という感じです。これだけの内容を詰め込むのなら3時間くらいは必要なところを、2時間に納めるためにだいぶ端折っています。

そんな無理な条件下でもなんとか破綻せずまとまったのは幸いでした。説明的な早口の科白の多さは、そのしわ寄せで仕方がない。

「シン・」の定番っぽい霞が関永田町しぐさですが・・
これは2度やられるとちょっと鼻につく感じです。シン・ゴジラのときは、それをこそ描こうという意図が感じられたから価値があったのですが、本作では単なるファッションに堕してしまっています。いやな予感のとおりになってしまいました。

特撮はよかったですね。もっとも今のCG技術からすると、特段どうということもないのですが。

ウルトラマンが飛ぶときに無音なのが、まったく未知の力を感じさせて、とてもセンスがいいと思いました。姿が美しかった。

全体をあわせて、可も不可もなしといったところでしょうか。

 

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2022.05.05

「ゴールデンカムイ」

NETFLIXで。シーズン1~3 全38話

漫画の方が完結して全話無料公開ということで話題になっている。でも漫画をスマホの小さい画面で読むのはちと難しいので、アニメの方を見る。こちらも樺太編で一応の区切りまで行っている。

お話は、宝探しの冒険譚にまだ生々しい戦争の記憶を絡めつつ、サバイバル要素もふんだんに取り入れていて面白い。

加えて、キャラが立っている。特に鶴見中尉と狙撃手の尾形はこういう舞台設定ならではの尖り具合がよい。

小数民族がほぼ絶えてしまってから多様性などと言い始める自らの業の深さをちくちくと感じつつ、主人公と周囲の群像の生き方を羨望を込めて見るのが吉。

だいたい、宝探しですからね。おまえら日々の生業はどうしたとか、金はどこで調達しているとか、考えてはいけない。

連休に手頃に楽しめてよかったです。

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2022.05.04

「ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス」

あれだけ広告打ちまくっているからには、本作にはたくさんの人の命運が掛かってるのだろうけれど、私にはどうもいまひとつだった。

あんな強力な魔法使いの目を覚まさせられるのは当のご本人だけだったという妥当なオチではあったけど、それじゃ周りの人たちの大騒ぎは何だったの、という感じ。全員振り回されましたね。

鍵になる女の子の名前もいけすかない。ストレート過ぎてげんなりする。

やっぱりMARVELの真面目路線ものはピークアウトしたのかもしれない。あとはThorのズッコケお笑い路線に期待するしかないか。

いいところといえば・・本人どうしの対決で♪が踊っていたのはちょっとよかったかな。

朝からコーヒーとかビタミン飲料とか飲み過ぎて途中2回もトイレに行く羽目になったので、あんまり大きなことは言えないのですが。だいたいそんなところでしょか。

マルチバース、使い方が難しいですね。スパイダーバースのような使い方の方がいいんじゃないかと思います。

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2022.05.03

「パリ13区」

男女の微妙な仲をケレン味なく描いた、という感じでしょうか。
正直に言うと私はこれを十分よく理解したとは言えません。パリについても分からないし、13区が移民が多い低廉な再開発住宅街区らしい以上のことは知らないし、アフリカ系、台湾系、田舎出身がそれぞれどういう立ち位置にいるのかについてはさっぱりわかりません。

ただ、彼ら都会に暮らす人々の寂しさと、それを埋め合わせるような関わり方はよく伝わってきます。フランスの映画らしく性愛は普通に描かれるのに、淡い感じを纏っています。人間関係は希薄で移ろいやすく、ITデバイスがいつも間に挟まります。

主な登場人物4人のうち3人は、それなりに高学歴だけれど、社会的成功を目指す勤勉克己とは遠いところにいます。これがつまり先進諸国ミレニアル世代のゆとりある生き方なのかもしれません。

それをすんなり抵抗なく取り出して見せてくれたのが本作の良さでしょうか。くどさや誇張を感じさせない、綺麗な取り出し方だと思います。

監督のジャック・オディアールさんは今年70歳。こういう美しく瑞々しい感性の70歳もいるということに驚かされます。

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2022.05.02

「空挺ドラゴンズ」

NETFLIXで。シーズン1全10話。

ずっと気になっていて、まとまった時間がやっととれたので見た。とてもよい出来で、満足度が高い。

ロードムービー+料理番組風の味付け+青春群像劇で、背景世界はファンタジー。

捕鯨を下敷きにして、鯨をファンタジーの龍(と呼ばれる奇妙な生き物)に置き換えているのだけど、これがとてもうまくいっている。大海原は大空に、武骨な捕鯨船は空飛ぶ捕龍船に、雄大な鯨は天翔ける龍に。想像力を目いっぱい刺激してくれます。特に龍をステレオタイプに囚われずに海生生物風の多様な形態で描いているのが素晴らしい。

お話の展開もよく出来ていて、単に勇壮な捕龍の様子だけでなく、地上の人間社会との関わりにも触れている。その上で、人間社会に居場所がないと感じた若者たちが一つの船に乗船し「おろち(龍)獲り」というドラマティックで本源的な職業に魅せられていく。

全編を通して、食物連鎖の中で生きることへの気取らない決意、歓びと畏れとが描かれていて、力強い作品でした。

冗長さを抑制して快適なリズムで仕上げているところもよかった。

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2022.04.30

「Coda コーダ あいのうた」

評判通りの良作。
可能性ある若者が才能を生かせる道に進もうとするも、周囲の無理解や、やむにやまれぬ事情で諦めそうになるところを、支援者の働きや本人の努力で、最後は行く道の切符を獲得するという黄金パターン。

見慣れたストーリーだが、この父、母、兄、師、そして本人のキャラクタがとてもよい。それが全てといってもいい。基本的に陽性なのだ。

加えて、本人に歌の才能があるにも関わらず、家族は皆耳が聞こえないという、あざといほどの無理解の設定が効いている。それが小さな町のコンサートで観衆の反応を目の当たりにして誤解が解ける様子が感動的。無音のシークエンスの挿入も上手い。

そして作中の歌の力。

言うことありませんね。
後味のよい、素晴らしい作品でした。

エンドクレジットで流れる歌がまたすごく内容にマッチしていて最高。

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2022.04.29

「カモン カモン」

これは・・たぶん自分的には今年最高の映画になりそうだ。
何度か見てみないと、これの真価は定まらない。1回見ただけのとりあえずの感想をとりとめなく書いて置いておく。


普通、商業映画には作り手と受け手のあいだにある程度暗黙に了解した線があって、そこからの距離の取り方で傑作凡作奇作問題作の違いが生まれると思う。

本作は、そういう暗黙の了解、つくりものである映画というものを成立させる作者と観客の共犯関係から逃れ、自由な振る舞いを見せていると思うのだ。

作中で、街の音を拾いながら叔父が言う「平凡なものをテープに定着させて特別なものにするって素晴らしい」というような趣旨の台詞がある。これが、本作全体を象徴する部分であり、私が本作を最高だと思う所以でもある。

何かを意図していない。
ただ、何かをそのまま提示している。

* * *

平凡さを表現する手法はもちろんいろいろあるだろう。けれども大抵の作品では、それは平凡を装っているにすぎない。平凡であることを見せることによって別の何かを表現しようという意図がいつも隠されている。それが、普通は映画というものを作る者と見る者とが共有する作法だろうと思う。

ところが本作は、平凡さをまるごと投げつけてくる。平凡そのものを描いて見せている。物語の中心にいる9歳の甥の行動が、その剥き出しの平凡さをつくっている。

実際、これほど当たり前で生の感じがする9歳を、これまで映画作品の中で見たことがあっただろうか。何の飾りもてらいもない。本当にそこに居そうな感じがする。

例えば街中を見回せば、意味のない雄叫びを上げてスーパーで買い物中の母親にぶつかっていく小さい子とか、何か振り回しながらその辺を意味なく練り歩く子とか、そういう、まだ制御されない剥き出しのエネルギー、平凡だが刮目すべきものを毎日目にしている。それに付き合ってへとへとになりながら困惑する大人、あるいはエネルギーを貰って幸せそうな大人たちとが対になって、何の変哲もない日常の街の風景をかたちづくっている。それをそのまま、加工せずに取り出したような感じがするのが本作だ。

言葉が多いのも本作の際立った特徴だ。様々な街での子供たちへのインタビューの声の挿入と、街から街へ移動しながらその仕事を続ける叔父と甥、大人と子ども、人と人との会話や行動が、折り重なって圧倒してくる。ストーリーを作る目的の、為にする挿入ではなく、ただただそれらが日常の平凡さそのものであるような構成。

その平凡さの連続の中に、大人と子供の関わりや喜怒哀楽、その移ろいを微妙に織り込んでいるのが、本作のまことに優れているところだ。ストーリーを作って、その中に感情や主張を埋め込むのではない。感じたそのままを塊として提示してくる。

こういう作品はなかなか無い。得難い体験でした。

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2022.04.24

「ミューン 月の守護者の伝説」

素晴らしいイマジネーションと造形。
定型のようでありながら独自性を感じさせるストーリー展開。

昼と夜とその中間を表すユニークなキャラクタ。それぞれの特質と役割の振り方もいい。夜の方が複雑で繊細で物語の主軸を成しているが、昼の方の絶対的な力も不可欠だ。

そして、中間を表す存在。このキャラクタの、一見役にも立たないように見える在り方と、運命的で悲劇的な役回りがとてもいい。このおかげで、作品は単純な二元論的世界に陥ることなく物語の独自性が生まれている。

作り手の才能を強く感じさせる良作でした。アレクサンドル・ヘボヤン。。覚えやすいなヘボヤン。

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2022.04.20

「パシフィックリム 暗黒の大陸 シーズン2」

NETFLIX シーズン2全7話

シーズン1に続く完結編。煮え切らないところはあったけど、まあ外伝的位置づけだし仕方がない。この世界の面白さは、怪獣の不可知性、予測不能性にあるから、そこを取り上げようとした野心はよかったけど、外伝であるがゆえの制約もあっただろうと思う。本編より先に謎を解明するわけにはいかないだろう。

シスターズというのはその穴を埋める仕掛けと取れなくもないけど、これも謎は謎のままで教祖もろとも壊滅して、目出度いとはいえ残念感も残る。ボウヤなどのハイブリッド開発計画にまつわるすべて含め、中途半端で終わってしまった。

その中で、この暗黒大陸を人間の組織力と知恵で生き抜いていたシェーンとメイの物語の方が、終盤にかけて良かったのが救いだろうか。

イェーガーとかいじゅうの巨大感はアニメだともうひとつだった。そこはゴジラSPに及ばない。

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2022.04.17

「皮膚を売った男」

見逃した名作を上映してくれるギンレイホールに感謝。


ラディカルな美術家の誘いに乗って、背中にシェンゲンビザの入れ墨を彫って自分を美術品という商品に仕立て、生まれ故郷シリアの紛争地帯から脱出しEUへ移住を果たす男の話。

皮膚を売る話は実話だそうだが、紛争地帯をそれで脱出するなどということは実際にはできないから、そういう仮定を置いたうえで起きる現象を通して、人の尊厳や自由について描く。

どんな非人間的な扱いが描写されるのかと思ったら、そういうことはなく、報酬待遇も十分で不満など漏らしようもない。むしろ、荘厳な雰囲気を湛える展示スペースの生ける彫刻として知られるようになる。

美術家がいう、現代においては人間よりも商品の方が移動の自由があるのだ、というコンセプトは、なかなか刺さるものがある。虚構としての本作のリアリティの源でもある。

とはいえ、見世物として連れてこられたという受け止め方も当然ある。シリアからの亡命者の団体からは、シリア人に対する侮辱だとの誹りを受ける。本人にもその葛藤はもちろんあるが、同時に、同国人にも関わらず亡命できるような地位や財力のある人間に反発も覚える。現代の我々が抱える格差や断絶のありようは、単純ではないことが示される。


美術館、金持ちコレクターの邸宅と場所を移していくが、美術品としての宿命で、オークションに掛けられることになる。無事高値で落札されたあとのこと、会場でやおら仁王立ちになり、スエットパンツの紐を引き絞って咆哮を上げる。すわ自爆テロかと勘違いした会場の身なりの良い金持ちや代理人たちが慌てふためいて逃げ散る様は爆笑ものだが、同じく勘違いしてこのシーンの意味を理解できてしまった自分も、彼らと同じだと気づいたりもする。シリア人、紛争と爆弾、招かれざる者、そういった差別感情は、事実に立脚した当然の警戒心の表れだから仕方がない。ポリティカルコレクトネスとの折り合いの悪さを噛みしめる。

この事件の結果、彼はEU域外退去ということになるのだが、選んだ行先は生まれ故郷シリアの首都ラッカ。過激派が支配する地域。母や姉を残してきた地に、幼馴染みの恋人と一緒に帰ることが、彼の自由を求める旅の終着点だった。まるで幸せの青い鳥の童話のように。

かくして、物語は収まりよく終わる、と思いきや、その直後に衝撃的な映像が流れて、予定調和に安心しきっていたこちらの安逸をぶった切ってくれる。そして、その収め方もまたお見事。自由とは、の問をさらに深く掘り下げてくれます。


根底にある種の品の良さとユーモアを湛えながら、現実と理想の葛藤や、その落としどころ、人々の知恵ある行動、若者の成長などを、笑いを交えながら、筋の通った脚本とよく考えられたディテール、役者の絶妙な演技の変化に乗せて見せてくれる、たいへん良質な映画でした。

監督はカウテール・ベン・ハニアさん。アラブの春の起点となったチェニジアの人だそうです。

なお、本作の優れた評として以下を挙げておきます。
https://news.yahoo.co.jp/articles/712397cf20e94076b95d824223f3e1d258340a60

 

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