2023.09.18

「ミステリと言う勿れ」

https://not-mystery-movie.jp/
 
漫画が原作らしい。探偵役がひたすらじゃべくりまくるそうだけど映画でもその片鱗が伺える。
 
話の展開がそれなりに面白い。最初、主役の女の子の演技があまりにクサいのでああ邦画だなあと思っていたら、それは実は(作中においての)演技でそこからこの話が本筋へと導かれるというトリッキーな展開。やられましたね。
 
そう思って見ると主役の女の子の演技が上手く見えてくるかと言うと決してそんなことはなく、やっぱり下手である。まあでも周囲のベテラン達が暖かく見守っているので救われた感じはある。
 
なによりこれは設定が興味深い。物語中盤で鬼伝説が語られてその全体像が見えてくるのだが、この伝説がなかなか真実味がある。鬼というのは比喩的な表現で、あの活気と混沌に満ちた時代にそういうことが実際にあったとしても驚かないようなものになっている。
 
そしてもうひとつ。伝説が教える伝統を墨守しようとする老人たちとその家系の若者がいて背筋が寒くなる一方で、鬼の血筋の子孫たちがそうした悪しき伝統は自分たちの代で終わらせるという意志を持って果敢に行動していることが、閉塞感の強い今の世の中に示唆を与えているのがよい。
 
願わくは、本作の製作者であるマスコミグループが、日頃の報道においても同様の姿勢を見せてほしいものだが、こちらの方はさて・・期待しておきたいとだけ書いておきますか。それと1点付け加えると、この画のテレビ臭さというかやぼったさはもうちょっとなんとかならないかといつも思う。
 
 
それからそうそう、犯人はほぼ最初からセオリーどおりで怪しい奴が結局真犯人だったけど、一時、松坂慶子演じる使用人のおばさんも怪しいかもと思ってしまいました。ありませんでしたね。すみません。松坂慶子にそんなケチな役をやらせるはずがありませんでした。お詫びして反省したいと思います。
 
でも松坂慶子が善人の仮面を被った大悪人っていう展開もどこかで見たい気がするんよねえ・・松たか子を超えるような極悪人役。ブランドを考えると無理なんだろうけど見たいなあ。

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2023.09.11

「カンフー・パンダ: 龍の戦士たち シーズン3」

https://www.netflix.com/title/81227574

シーズン3全19話。NETFLIXで。

前シリーズでは、天山の武器4つを首尾よく集め、それを破壊すべくイングランドへの航海に乗り出したのだった。本シリーズはその続き。途中少し寄り道はあったものの目的地に到着して、イタチの魔法使いとの闘いかと思いきや、想像もしなかった意外な敵が折り重なるように現れてまたしても大冒険。全19話という長さが全く退屈せずに見られる盛りだくさんなエンタテイメントです。素晴らしい。

この「竜の戦士たち」は中国から飛び出して世界中を旅する設定で、ストーリーがダイナミックで面白い。異国の地で仲間になったキャラクタも特徴的で、彼らの背景描写であるサブストーリーもそれぞれ面白く話に広がりがある。それでいて、ポーとルテーラの名コンビが話の主軸をしっかり押さえていて散漫にはなっていない。
このルテーラの存在が本シーズンの最大の成功要因だと思います。

加えて鍵になるアイテムが巻物とかではなく魔法の武器なので、それを使ったバトルシーンも超派手で見応えがある。私はやっぱりガントレットが一番好きかな。次がヘルム。

というわけで、すごく楽しめます。まあ、私の精神年齢にちょうど合っているということかもしれませんが。

次のシーズン4はなんと、ポーが大都会に出てくる設定らしくて、またまた期待が持てます。末永く続いてほしいですね。

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2023.09.04

「ONE PIECE 実写版」

https://www.netflix.com/title/80217863

NETFLIX 全8話

原作漫画やアニメは見たことがない。映画版を1本だけ見たけれど、あまりにお子様向けの展開であまり面白いとは思わなかった。

ところがところが。本作はかなりの力作だ。
無理が無く、筋が良く、心の琴線に触れるところがある。

アニメのハリウッド実写化は失敗が多いようだけれど、この作品にはそれには当たらない。それどころか、出来の悪いテレビドラマに比べて、はるかに優れていて面白い。

うまくいった理由は、端的にここに書かれているのでご覧あれ。
https://jp.ign.com/one-piece-live-action/70224/news/netflixone-piecesbs

ともあれ、これでハリウッド実写化のコツが作り手たちに広く共有されて、日本の漫画・アニメコンテンツが世界に進出して行ってくれることを祈らずにはおれませんわ。

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2023.09.03

「アステロイド・シティ」

https://asteroidcity-movie.com/

「フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊」が、アメリカから見た憧れのヨーロッパって実はこんな感じ、という作品だったとすれば、本作は、そこに住んでいる目から見るとアメリカっていまこんな感じ、という作品なのではないかと思いました。

「フレンチ・ディスパッチ~」が、雑誌という媒体にヨーロッパの断片を切り取って張り付けた形式を取っていたのに対して、本作は、演劇という媒体を使った米国のコラージュの形式を取っています。

米国のイメージとして他国の我々にもお馴染みの様々なイメージ、砂漠とサボテンの西部、資源を運ぶ長大な列車、農業大国と自動車王国と核ミサイルの同居、UFO、ショービジネス、福音派とキリストを信じない子どもたち、小数の科学の天才たちが牽引するフロンティア、警察と犯罪者のカーチェイス、などなどなどが戯画化され、演劇のひと場として詰め込まれています。その裏側では、劇作家と主役俳優を取り巻く人間模様がモノクロで挟み込まれて行きます。

この2本立ての進行は交わらずに続いていくのですが、最後に、劇中劇の主人公がセットから抜け出して脚本家に抗議にいくことでその境界が破られます。主演俳優は、自分が演じているものの意味がわからないと言い、劇作家は、それでいい、あなたは正しく演じていると答えます。そして主演俳優は、息抜きに出たバルコニーで、劇中には出番のなかった彼の妻役の俳優と出会い、言葉を交わします。

この場面には生身の人間の実感が籠っており、本作の他の部分が生の感情を出さない蝋人形のような体裁をとっていることと、鮮やかな対比を成していて、奇妙な感慨を呼び起こします。おそらく本作は、この場面を際立たせるために、ここまで手の込んだ機械仕掛けのドタバタを延々と見せてきたのではないか。ではこの場面が意味するものは何でしょうか。

妻の死。その悲しみが本作には随所に埋め込まれています。故意に無表情な描き方をしているので気づきにくいけれど、そこには深い悲しみがあるはずです。それが最後のこの場面で突然浮上して、観る者の心を揺さぶるようにも見えます。

あるいは、人の目に触れずに役割を果たして報われることなく消えていったものへの哀愁もあるかもしれません。直接的な受け止め方ですが。

更には、歴史の転換点に立っているアメリカは、この先どうなっていくのだろうかという不安もありそうだといったら、さすがに穿ち過ぎでしょうか。米国社会のコラージュを使っているので、そう読み取れなくもない気もします。

いずれにせよ、この最後のパートで、見る側は、何重にも折り重なったイメージが同時に着床する不思議な気分に囚われます。そして、エンディングの歌がまた意味深です。

"You Can't Wake Up If You Don't Fall Asleep"
歌詞はこのサイトにありました。
https://www.azlyrics.com/lyrics/jarviscocker/youcantwakeupifyoudontfallasleep.html

目覚めるために、まず眠れ。とでも訳しますか。

伸びんとすればまず縮めという諺を思い出してしまいます。
どう受け止めるかは人それぞれだと思います。

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2023.08.27

「君は行く先を知らない」

https://www.flag-pictures.co.jp/hittheroad-movie/

これは少し解説がないと、私のような普通の日本人には最後までわからない。

旅人というのは国外脱出者のことだ。場所はイラン。経済制裁の影響と宗教右派の支配のもとで国内に希望を見出せない家族が、せめて長男だけでも国外に逃がそうというお話。

王政時代には西洋文明を受け入れ繁栄していた名残が、家族のやり取りの中に仄かに感じられる。それが陽気なものであればあるほど、背景を知ったあとでは、現実の悲哀と裏腹だとわかって衝撃を受ける。まだかわいい盛りの次男坊が、ごく自然に大地にくちづけする礼拝をするたびに、昔の繁栄を知る母親が苛立つのも理解できる。

この少年が、宗教かぶれなのではなく、心の底から大地の恵みに感謝する気持ちを持ち合わせているように見えるので、単純にカルト批判のようなことは言えない。こういう生き方も確かにあるのだろうと思ってしまう。西洋のヒーロー映画の主人公への崇拝と、宗教的な敬虔とが全く矛盾せずに、小さく利発な子の中に同居している。

おそらくこの子も、成長するにつれて、兄や父母と同じように、宗教が支配する国の実情に幻滅を覚えるようになるのだろう。それともどうだろうか。純粋さを持ち合わせたまま、新しい世代を作っていくのだろうか。

折しも、イランという国は、宗派の違いからこれまで敵対してきたサウジアラビアと共にBRICsに加盟した。経済も政治もこれから大きく変わっていくかもしれない。

待ち切れずに国外へ逃れた兄と、父母の元に残った幼い弟と、それぞれにどんな明暗が訪れるのか、誰にも分らない。

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2023.08.20

「SAND LAND(サンドランド)」

https://sandland.jp/

原作は漫画らしい。知らなかった。wikipediaを見ると、短期連載だったようだから、ちょっとした小品なのだろう。

鳥山明の素の作風そのまんまが映画になったみたいで好感は持てます。あられちゃんとかああいう感じで、そこからはちゃめちゃ感とエッチ感は押さえて、真面目に子ども向けに作ってある。実際、子連れの客も多かった。

悪魔の王子とお付きのような老悪魔は助っ人の立ち位置で、一徹な感じの人間の年寄りが主人公。そう、なんと主人公は年寄りです。思い切ったな。でも正解のような気がする。

過去の未熟を悔いて正義を貫こうとするこの主人公の、水を求める探索の旅を描きながら、現代社会への批判も多々取り入れて、今風映画のスタンダードに沿っている。

あまりにスタンダードでアクがない分、むしろ物足りない気もする。例えば主人公の妻の話は、もうちょっとだけ引っ掛かりを作っておけば深みが出るところ、あっさりと昔語りだけで済ませているようなところがそう。おそらく、そういう深い話は子ども向けのコンセプトには合わないということで削っているのだろう。なので、大人が見ると少し食いつきが足りない感じになる。

名作の要素は全て揃っているのに、名作というほど記憶に残らないという、あの感じ。いい作品というのは、言葉にならない想いが込められているものだが、本作はすべて言葉で説明している。そういった仕上がりになった。

とはいえ、この悪魔二人のキャラはなかなかいい。次はもう少し拘りをもった大人向けの作りにしてくれると嬉しいが、たぶんそういうのは他でやるんだろうな。

まあ、時間があるなら見ても悪くはない、くらいの作品でした。

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2023.08.13

「マイ・エレメント」

https://www.disney.co.jp/movie/my-element

最高に感動する素晴らしい作品。
この作品は単に見た目が面白いだけでなく、品格が備わっている。

いっとき敬遠気味だったPIXER映画だが、見てみるとやっぱり良い。ストーリーはほぼ定番だから批評筋には受けないのかもしれないが、むしろ定番の良いところを巧みに組み合わせて、文字通り筋の良いお話を作っている。

その土台の上に設定の奇抜さを載せてビジュアルで魅せるという、アニメーションスタジオとして一番力を出せるコンセプトに忠実に従っている。揺るぎない幹と目にも彩な花実。そうして出来上がった作品が、面白く、美しく、感動を呼ばないわけがない。

本作は、火、水、土、風のエレメント達が暮らす街のディテールを想像力豊かに描き出していて、その驚きのアイデアの数々がまず楽しい。よくまあ次から次へと思いつくものだと感心を通り越して感動を呼び起こす。それぞれのエレメントの特質をよく捉えたうえで考え出されているのでストレスがない。観る側のイマジネーションを最高に刺激してくれる。

そして、それらディテールの豊かさが、ストーリーの本筋としっかり噛み合って、山あり谷あり愛と涙ありの素晴らしい作品として立ち現れてくる。

* * *

故郷の災禍から逃れるようにこの町へやってきた移民家族の艱難辛苦を背景にしながら、逞しさ、優しさ、希望、寛容、互いへの思いやりと自己実現の希求、葛藤とその昇華、ありとあらゆるものが盛り込まれていながら十分吟味され然るべき位置を与えられている。
その締めくくり、娘の旅立ちに際して父娘が交わす伝統の礼に込められた万感の想い。最高じゃないですか。

こういう良さは、想像だけれど、作り手たちの誠実さやひたむきさがそのまま作品に結実しているのではないかと思う。

繰り返しになるけれど、本作には品格がある。本年でも指折りの良作でした。

https://eiga.com/news/20230814/13/

 

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2023.08.12

「バービー」

https://wwws.warnerbros.co.jp/barbie/

Googleで「バービー」を検索すると、検索結果リストの画面にキラキラ効果が出るという力の入れよう、ただものではありません。

こどもに夢を売るのが人形というものですが、それが見せる夢の形が進歩的な価値観に縛られ過ぎていることを疑問視して、むしろ大多数の平凡な人々の平凡な幸福を「定番」バービーに体現してもらうというお話に見えました。

結婚して子供を産むのが女の幸せという昔の幸福の形に、一周して戻ってきたと言ってもいいのかもしれません。もちろん、昔と違って、それ「だけ」が選択肢ではないという意図は十分に盛り込みつつ。

加えて男の側にも、闘争と支配のマッチョ指向から卒業して、次の次元に移れと言っているようでもありますが、それが何なのかはよく読み取れません。まあバービーは女の世界の話なので、男は付け足しになるのは致し方ないという割り切りでしょうか。

直感的に今という時代の流れを感じ取るという姿勢が、本作の見方としてはいいのかもしれません。

それにしてもこのデザイン、ド派手というかキッチュというか。眩暈がしました。

その割に、夢から醒めて現実を見ろ的なことを言うんですよね。日本だったら「シン・エヴァンゲリオン」ですが、米国だとザック・スナイダー版「ジャスティスリーグ」てことになるんでしょか。さりげなくdisられてましたw

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2023.08.11

「ハート・オブ・ストーン」

https://www.netflix.com/title/81416533

NETFLIX

ガル・ガドットさん立ち姿がほんとかっこいい。いつもスパイアクション映画みたいなのばっかりで、もっとこうラブロマンスとか出ないのかなあ。来年はスノー・ホワイトって聞いて期待してたら女王役だとかでがっかり。むしろはまり過ぎてこわいわ。

というくらいに、俳優の名前だけで客を呼べるガドットさん、本作でも遺憾なく存在感を発揮してくれてます。他の出演者は全て彼女の引き立て役にすぎないというくらいのスターっぷりはトム・クルーズと双璧と言ってよいでしょう。

映画の内容はというと今回は割とあっさりしていて淀みなく山谷あって巧みです。あーつまりとてもよく出来ていて記憶に残らないくらい。でも最近はちょっとそういうのがいいのかもしれないなと思ったりもします。その中で自分にヒットするポイントだけ掴めばいい。

本作にも流行のAIが出てくるのですが、AI自体にはさほどの意味もなくて、人間集団どうしの闘争を描くためのトロフィーです。一点、ちょっと良かったのは、確率だけで出力を出すのなら形成逆転はない。それをやれるのは人間だけ。という考え方があったことです。だいたい世の中の認識はそのあたりに着地しつつあるということなんでしょうか。

てことで、映画館でなくて配信でも十分楽しめる作品でした。

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2023.08.06

「アンデッドガール・マーダーファルス」

https://undeadgirl.jp/

NETFLIXで。1~4話

ファルスって「笑劇」という意味なんだ、ということは知らなかったけど、この作品は笑劇というか、むしろ駄洒落劇なんじゃないかと思った。それをわざわざファルスなどと気取った言い方をするところに、作品の端々に現れる西洋礼讃な感じがよく出ている。その舶来指向の上に、不死と鬼という本邦の皮を被せて、古臭い和魂洋才な感じを出している。

で、そういうところが割といいなと感じるわけだ。
もちろん、実際にそんな奴が身近にいたら鼻持ちならないわけだが、創作の中であればむしろそれが輝くことになる。

とはいっても、そうとうやり過ぎだ。お馴染み過ぎて陳腐さすら感じさせるヴァンパイアとかホームズとかルパンとかオペラ座の怪人とかモリアーティとか、もうごった煮状態。そのご都合主義あふれるカオスの中に、どんな怪物の再生能力をも阻害する力を持つという設定の鬼の血を持つ東洋人を投げ込んで暴れ回らせる。

あざとすぎます。

いかにもフジ系列らしい、芸術気取りの低俗な作品でした。でもたぶん次も見てしまいそうです。

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