明けてみると雨は上がって、雲はあるが空は晴れている。でも峰にはガスが掛かっているからスカイラインからの眺めは期待できなさそう。
濡れそぼったテントを畳んで出発。たいてい次の野営地で乾くからあまり気にしない。昨日も書いたが、西洋人中国人それぞれのグループはどこも登山者の出で立ちで、朝っぱらから歩き出す気満々だ。朝早いのが自慢の私よりさらに早起き。日本は全体的に随分緩くなったのかもな。
さてスカイラインがダメになったので、山を下りて市街地でまったりしてみることにする。以前はがつがつと山歩きするのが主だったが、歳を取るにつれてしんどく大人しくなり街中で過ごすことが多くなった。御殿場、裾野、箱根湯本、湯河原と選択肢はいろいろだが、とりあえずまだ通ったことがない裾野市へ。スマホの充電もしたいからね。イートインのコンビニに運よくコンセントがあったので一息つく。最近はコンビニでもコンセントがないところが多いのだ。充電タイムはPCでニュースを見たり旅行記を書いたり今日の野営地を探したりする。
GoogleMapsのおかげで宿探しは実に楽になった。昔はツーリングガイド本を睨んでえいやで決めていたところが、いまは結構詳しい情報もMapsで写真付きで見られる。ガイド本を携行しなくなって久しいが充電が必要なのが玉に瑕ではあるけど。古いモバイルバッテリでスマホ1回分くらいはなんとかなるとしてもPCの充電はコンセントからでないと難しい。バッテリも新調したいなあ。
いろいろ見比べて大野路というところにしてみる。広そうなサイトだし。電話して予約してエンジン掛けてスタートまで10分。充電も8割くらいできた。移動は地図上だと結構距離がありそうだが、バイクの足だとあっという間だ。
この辺りは工業団地のようで、なだらかな土地に低層の建物が点在している。裾野の名のとおりで、富士に向かって緩やかな上りの地形なのだ。東から南向き斜面で暮らしやすそう。途中パノラマラインという道があったので寄り道してみると、富士に向かって直線道路が通っている。晴れていればきっとすばらしい景色なのだろうけれど、残念ながら御山は雲で覆われている。
キャンプ場についてみるとこれが大当たり。空も土地も広くて清々しい。芝生は柔らかくてうれしい。水は富士山の伏流水で冷たく爽やか。そして明日から始まる連休の前ということで空いている。明日以降は予約満杯で250台くらいの予約が入っているらしい。今日はサイトを区画して番号を振っていく作業中だそうだけれど、今日は好きなところに設営してよいとのことで、サッカーグラウンドくらいの芝生の区画がいくつもある中、そのひとつを一人で独占して気分がいい。日差しも暖かくてテントもすぐ乾きそうだ。
あんまりいいところなので、もう走り回って観光する気分にもならずまったり過ごす。自分の感覚もようやく人並みになってきたのだろうか。
朝10時から風呂を使えるそうなので、一番に湯につかる。大型の古民家風の食事処もあるが、今は営業していないらしい。昨日の秀明館といい、どこも人手不足なのだろうか。
昼を食べに近くの御殿場駅までバイクを転がしてみる。特に大きな市街でもなく、最近忘れかけていた地方都市の空気を思い出す。東京はどの駅でもすべての密度が高くて実は息が詰まっているのだということは、こういう機会でないと気づけない。知らないうちに病んだりしないように、時々別の時間空間感覚を味わいにくるのも大切だ。
ファミレスの一つに入ったら、窓から富士山が正面に見える席がちょうど空いていて鼻息荒く確保。地元の人は御山を見慣れているからなんということもない席かもしれないが、よそ者にとっては最高の席だ。それに見合う高そうなメニューを頼みましたよもちろん。
晴れた昼間は地面が温まって上昇気流が生まれているから、あれだけ高い山ともなると雲が絶えず湧き出して、山自体の姿が見えることはむしろ珍しいのだろう。刻々と変わる雲を見ているうちに時間が溶けていく。
まったり過ごしたので野営地に帰る。帰り着いた頃、頭上から突然の爆音に襲われる。見ると、オスプレイというニュースでよく見る飛行機の機影がある。すごく低い高度を飛んでいる。農薬の散布でもしているのかと思えるくらい低い。そういえば自衛隊の駐屯地が近くにあるのだった。この空域を何度も行き来している。訓練なのだろうか。
それにしてもかなり低速で飛んでいて、ヘリと違って水平飛行している状態であんな低速で翼の揚力は足りているのだろうかとひとごとながら心配になる。キャンプ場の主に聞いてみると、しばらく前に反対運動があったがいまはもう落ち着いているということだった。まあ、牛が驚くくらいで日常には害はないだろうからなあ。。
日が暮れはじめると地面も冷えて上昇気流もなくなるからなのか、富士山周囲の雲が徐々に消えて雄大な姿が拝めるようになる。しばしのあいだずっとその変化を見ているうちに一日も終わる。あくせくと観光せず、今日はいい過ごし方だった。