2024.04.08

「あの夏のルカ」

https://www.disney.co.jp/movie/luca

Disney+PIXER の健在ぶりがわかる良作。技術は明らかに進歩している。二人の海の少年が陸に上がったときの浪打際の表現が、実写かと見紛うほどで凄い。

そしてお話の内容がいい。このブランドで語られる物語には、時代の移ろいに左右されない不動の理念があって、本作でもそれは遺憾なく表現されている。

未知の世界へ挑戦する気概と、異なる世界でも通用する普遍的な理念への信頼。それが巧みな話の運びで示されていく。味付けとして、友達との不和と和解もあれば、怠惰な生活への恐れや誘惑もあり、親との行き違いもあれば祖父母世代の援助もあり、よそ者み向けられる不審や敵意、世界との軋轢があり、その中で新たな友情や信頼を育む営みがあり、子どもの情操教育に必要なほぼすべてが揃っている。

というと、子供向けの作品のように見えるかもしれないが、現実肯定が行き過ぎて理念を見失いがちな大人にとっては、いわば薬のようなものだとも言える。

こうした作品を紗に構えて見下す大人は多いかもしれないが、素直に向き合ってみれば紛れもない良作であることに疑いない。

とまあ、固いことを書いたけど、本当はあのごっつい巨躯の漁師のおっさんの手作りパスタが超美味そうだったってことなのよね。

次は「インサイドヘッド2」が公開されるそうで、こちらも楽しみです。

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2024.04.07

「NN4444」

https://eiga.com/movie/101075/

4本の短編不思議映画。ホラーという触れ込みになっているけれど、むしろ不思議と呼びたい内容。

「犬」
これが一番わかりやすい。いわゆる勝ち組と負け組の断絶と、負け組の魅力のようなものを描いている。
本作中の勝ち組の描き方はステレオタイプで、そこには焦点が当たっていない。
一方負け組は働いたら負けという価値観だから、勝ち組とはそもそも言葉が通じない。そこを突然の「ワンッ」という言葉で表現している。まあ、そういう作品。
まじめに働いて社会に貢献して自分の地位や収入を上げていくという価値観に対して、是か非かというのが分かれ道だが、疑問の余地なく是という立場からはよくわからないかもしれない。負け組の優位性としてひとつ挙げるとすれば、自由、ということがあると思うけれど、本作には自由の様々な態様が盛り込まれていて魅力的だ。
本当にそんなに自由に生きられるわけもないのが自明だからこそ、力強く成立しているような作品でした。

「Rat Tat Tat」
それなりの格式の家において、嫁の立場は世継ぎを生むことで確立されるのだろう。もし流産などすればどういう立場に置かれるか、庶民のわれわれは想像するしかない。
本作はその針の筵のような立場を、コミュニティの成員の無言の手拍子だけで表現している。
拍手というのは心温まるものだし、手拍子には励ましの力があるけれど、それがふと行き過ぎると恐ろしい強迫的な力を持つことになる。本作にはそれが目一杯表現されていて脂汗が出ます。

「VOID」
わりとありがちな作品。多感な思春期の少女たちの中に、ふとした拍子に亡くなってしまった友達の記憶が影を落としている。教師の形をとって徐々に輪郭が現れてくる現実の理不尽さと、生まれてからこれまでの短くて輝くような命の儚さとがせめぎあっている感じ。この先どちらに転ぶのかは誰にもわからない。
ふとした拍子に均衡が破れると、儚い命はあっさり終わってしまう。そんな風な作品。

「洗浄」
これが一番ホラー味がある。湖で何かに取り憑かれてしまった男から、穢れたものが仲間に次々伝染していく。狂気のようにうがいで洗い落とさずにはいられない。その穢れははじめは湖の水から来たように見えて、その実、彼らの内に初めからあったものだ。そのことが惨劇が進むにつれて徐々にわかってくる。そしてその穢れを忌み洗い落とそうとしている者も、終局に向けて彼ら彼女らの表情の中に確信を持って現れてくる。
湖の深みへと歩みを進める最後の男が、振り返ったときの表情が絶品だ。
「お前だな、これの原因は」
「助けてくれ、見逃してくれ」
声なき声で振り絞るように叫びながら、抗うこともできずに溺れていく。
恐ろしい、と思わせる迫力がありました。

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2024.04.04

「ポケモンコンシェルジュ」

https://www.netflix.com/title/81186864

全4話 NETFLIX

1話20分と手軽に楽しめる長さで、ちょっとした癒しムービー。
ポケモンたちが休暇を過ごしにやってくるポケモンリゾートで、スタッフとして働き始めた人間の女の子がポケモンたちと一緒に過ごす。活気がありながら日常を離れた緩い時間を眺めて癒される。。

女の子の相棒はコダック。念力が使えるのでいろいろ役に立ったりトラブルになったりする。ほかにもポピュラーなポケモンたちが出演していて楽しい。コイキングがギャラドスになるところなんかもちゃんとある。

重い映画に疲れたら、ちょっと見てみるのにちょうどいい作品です。

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2024.04.01

「ゴッドランド/GODLAND」

https://www.godland-jp.com/

アイスランドに布教するため派遣されたデンマークの若い牧師にまつわる話。
街の中で育まれた牧師の軟な信仰が、氷と炎が支配する過酷で荒々しい島の洗礼を受ける課程を、美しい自然を背景に淡々と描いている。

この牧師には布教者に必要な不屈の信念がない。信仰は紙に書かれて読み上げられるもので、それ以上の現実の重みがない。そういうものが厳しい自然に晒されたときにどうなるかは火を見るより明らかだ。

ただ同時に、その厳しい自然の中で生きている人々の中に、牧師がもたらす文化や教養に対する憧れと、神の罰への惧れとを読み取ることもできる。彼らが初めのうち、牧師に違和感を感じながらも受け入れようと努力する様にそれが見える。

写真を撮ってくれという案内人の男は野人だが罪びとには見えなかった。ところが実はふたつの言葉を話せる能力を持ちながらこれまで黙って牧師の嘲りを聞いていたことがわかり、人や馬を平然と殺めもする者だと告解していくシーンは衝撃的だ。牧師の中の優越感や価値観が完全に破壊され凶行に及ぶほど、その衝撃は大きかった。

それもしかし何事もなかったように木造の教会は完成し、最初のミサに臨む牧師だが、それまでの積もり積もったストレスから、些細なことに耐え切れずとうとう逃げ出してしまう。

その末路は哀れにも見えるが、落ち着くべきところに落ち着いたとも思えるのは、正方形のスクリーンにずっと映し出されていた、人の営みを超越したような自然の佇まいがあるからだろうか。

解釈を拒むような美しくも厳しく張り詰めた空気を持った作品でした。

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「薬屋のひとりごと」

https://kusuriyanohitorigoto.jp/

全24話。NETFLIXで。

設定が奇抜で面白い。物語のテンポもいい。飄々とした主人公が誰からも愛され頼られ万能過ぎるのが玉に瑕だが、そのおかげで話にスピード感が出ているので、これはこれでいい。

物語の複数の主要な筋が、前の筋の中に撒かれた伏線や設定を拾い上げながら重なり合っていき、奥行きを感じさせる。そのおかげで24全話がばらばらにならずに一体感が生まれて、ボリューム感がある。

最後に持ってきた主人公の実の父をめぐるエピソードが、嫌な奴だと思っていた男の、半生を掛けた悲恋に昇華されて、見事な着地を見せる。

たいへんおいしい作品でした。続編の企画もあるそうで、次が楽しみです。

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2024.03.31

「オッペンハイマー」

https://www.oppenheimermovie.jp/#

科学と政治と思想とが入り乱れて緊張感のある3時間だった。
脈絡のないようにも思える各カットが、こうして繋ぎ合わされることで、この物理学者の人間としての総体が立ち現れてくるようで、クリストファー・ノーランはいい仕事をしたと思う。

この作品について、広島とか長崎とかをことさらに取り上げようとするのは間違いだ。また、作品の細部について、被爆国の心情からあれこれ解釈を加えることにも違和感がある。

そうではなく、これは開発主体である連合国の科学界が、どんな世界情勢のただなかで、政治の世界からどんな働きかけを受け、どう目標を設定し、どんな葛藤や軋轢を抱えながらそれを完遂したか、そして後年、この人物が、自ら解き放った恐るべき力をどう思うようになったか、そういうストーリーとして丸ごと受け止めるのがよいだろうと思う。

ただ、こうした新兵器の開発は最先端の科学者にしかできないとしても、いったん出来上がったものを発展させ運用することからは、当の科学者たちは遠ざけられるという冷徹な事実があったことは、知っておいてよいと思う。

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「ゴーストバスターズ フローズン・サマー」

https://www.ghostbusters.jp/

1は面白かった。2は主人公の女の子の知的で勇敢な感じと、素朴な田舎の環境とが溶け合って心温まる懐かしい話だった。

それを受けた本作はというと、ちょっと期待外れは否めない。なにより、ゴーストバスターズの活躍といっても、事件の発端を考えるとマッチポンプになってしまっているのがいまいちだ。登場人物たちも取り立ててキャラが立っているわけでもない。強力なゴーストを封じ込める切り札の人も取ってつけたような感じで浮いていた。
アメリカ人の好きな家族愛の話に落とし込もうとしているけど、底が浅い感じがした。

2でやめておけばよかったのになあ。少し残念でした。

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2024.03.25

「葬送のフリーレン」

https://frieren-anime.jp/
全28話 NETFLIXで

なんとなく絵柄に惹かれて見始めたのが第8話が公開されたあたりで、そこからはまりました。面白さに気づいたのは第3話、クヴァールのエピソード。人間がその短い一生と引き換えに、どれほどの進歩を遂げるかということが、封印されたまま80年を経たクヴァールとの対比で鮮やかに描き出されていました。これまでエルフという種族は、ファンタジーの世界ではある種の添え物、便利な小道具としてのみ使われてきたように思うのですが、本作では、その長寿が物語の中心テーマにすらなっているようで、悠久の時間と短命な人間の生の営みとが随所で交錯することで、深い陰影を生み出しています。ぐっときますね。

見始めてみると、そのほかにも様々な面白さが埋め込まれていて、飽きないつくりになっていました。なによりその世界観に惹かれます。今は亡きヒンメルの生き様をフリーレンの回想の形で折に触れ挿入することで、日常の些細な事柄の大切さが、大冒険譚と並ぶ重みで語られます。最終回のヴィアベルの一人語りは、その総まとめのようになっています。世に溢れる凡庸なヒーロー物語との決定的な違いを感じることができます。

もちろん、普通の作品でもそうしたことは盛り込まれてはいるのですが、たいていはおざなりだったり取って付けたような不自然さがあるところが、本作ではそれをごく自然な振る舞いとしてことあるごとに描いていて、それがちっとも嫌味でなく、清々しさを感じさせるのが凄いです。技術的には語り口のうまさなのですが、それ以上に作品の精神的な支柱としてしっかり根付いている感じです。

作品の基礎がそのようにしっかりできているうえに、注目すべきは現実社会との関連です。「魔法」という言葉を「技術」と読み替えると、現代社会にも通じるところが多く、いろいろと考えさせられます。魔法は自由であるべきだというフリーレンの考え方と、魔法は特別なものであるべきだというゼーリエのそれとの違いなどは、オープンソースにまつわる議論や、技術の民主化の議論などを髣髴とさせます。作り手はそうした現実社会の動向にも明るいのだろうと思います。

原作の方は、女神の石碑、黄金郷のマハトなどを経て、ゼーリエ暗殺という興味をそそられるエピソードが続きますが、人間についてもっと知ろうと思うという基本設定は守備範囲が広いので、いくらでも拡張していけそうです。

本作については、ほかにもいろいろと語りたいディテールがたくさんあるのですが、長くなってしまうので、また別の機会としたいと思います。アニメの方もこの高品質を保ったまま続いてくれることを期待したいです。

そうそう、私の好きな魔法使いは、自分でも意外ですが、リヒターです。職人気質と視野の広さと世渡りの苦みとがバランスよく同居しているようなところが良いですね。

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2024.03.24

「四月になれば彼女は」

https://4gatsu-movie.toho.co.jp/

野菜も食わねばいかんぞとデンケンじいさんに言われたこともあって、恋愛映画も見なければいかんということで行ってみました。単純なホレタハレタではなく、余命映画の粋を組み込んだ夫婦関係を長持ちさせる映画でした。日常の些細なことってとても大切ということがわかります。

元カノの面影が心の底にまだ残っている夫と、幸福に罪悪感を感じてしまう妻。その夫婦の一時的な別離から再会に至るまでを、元カノの病死を交えながら辿っていきます。夫の前から姿を消した妻が元カノが入院している終末期医療施設で職を得て、その人と成りを知っていくところはアイデアだなと思います。余命ものが生み出す情動を恋愛作品にうまく取り入れています。

美しい思い出や叶わなかった旅路なども満載で、わりとじんわりとする良作でした。やっぱり野菜は食っておくべきですね。

ただまあ、ウユニ、プラハ、アイスランド、そして海辺の療養施設・・結構お金かかりそうですね。

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2024.03.23

「三体」

https://www.netflix.com/jp/title/81024821

全8話。NETFLIXで。

三体ってそういう意味だったのか。それをビデオゲームの形式で見せてくれるのがなかなか面白い。小説は読んでいないけれど、独創的な感じがある。それはたぶん時間感覚の扱いにあるのだと思う。人類の進化のスピードと三体人のそれとの違い。三体人が太陽系に到達するまでの400年というタイムラグ。そういうことがお話の基礎に組み込まれていて、あらゆるエピソードがその独創的な影響を受ける。

ただ、面壁人というのが何なのか、少しわかりにくかった。一気見したので、終わりの方は少し居眠りしていたせいだと思うのだが、巻き戻して拾い見してもよくわからない。仕方がないので小説のあらすじをネットでざっと見てわかった。ここはⅡに続く重要な基礎になるはずだから、もう少しじっくり扱ってもよかったのだはないかと思う。

それから、人間ドラマが少し余計というか煩い感じがした。それが三体人との決定的な差異として後半に効いてくるなら話は別だが、それがまだわからない。草食系研究者で癌末期の彼が脳だけの存在になって飛んで行ったあとどうなるのか、そこは気になる。やっぱり小説を読んだ方がいいのだろうか。

本作はたぶん小説のⅠの部分だろうけれど、続きも楽しみ。

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