2017.12.10

「KUBO/クボ 二本の弦の秘密」

いやもうね。
ファンタジーの王道。しかも心にしっとり沁みるストーリー。「コララインとボタンの魔女」以来の久しぶりのLAICA作品。力作です。

アメリカ人にも、こういう繊細で美しいものを作れる人たちがいるのかと思うと素直に尊敬します。

なにより、日本という国を、エキゾチズムの文脈ではなく、こんな風に取り上げてくれて本当に嬉しい。
私は古いタイプの人間なので、こういう話にはぐっときます。

映画としてもしっかりした組み立ての良作。ストップモーションとは思えないなめらかな動き、情感の滲み出ている表情。

ディズニーが取り上げて世界中で上映しても、全然おかしくないどころか、たいがいのディズニー映画より評価は高いはず。

言うことなしのワタクシ的本年ベスト3です。

こんないい作品が今週でおしまいなんて、すごく残念。
時間のある人はぜひ見に行ってください。

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2017.12.09

「オリエント急行殺人事件」

ホームズにしろポワロにしろ、昔の推理小説は、わりとご都合主義な感じがして。相手や事物を観察していろいろ言い当てるのだけど、それ、別の見方もできてしまいそう、という違和感を持ってしまうのです。

なので、あんまり没入はできなかった。
それでも、映像の質とか、俳優の力とかがスクリーンから放射されていて、そこは楽しめました。

ジョニー・デップは、憎むべき悪役が上手い人だけど、昔ほどじゃなくなったかも。悪そうな感じを出すのは相変わらずいいんだけど、観客から憎しみの昂ぶりを引き出すところまで行ってないというか。出ている時間が短いから、さすがにちょっと難しかったか。

ポアロ役のケネス・ブラナーさんの柔らくて深い声がいいです。この人、監督業もやっているのね。知りませんでした。

声がいいもう一人は、デイジー・リドリーさん。言わずと知れたスターウォーズ現シリーズの主役です。独特の響きがあるのね。顔でわからなくても声ですぐわかる。

ほかの俳優さんも申し分なし。
まあ、ストーリーや謎解きではなく、そういうところを見に行く映画ということで。

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2017.12.08

「グザヴィエ・ドラン バウンド・トゥ・インポッシブル」

この人ほど「鮮烈」という言葉が似合う人はいない。
情熱と才能を兼ね備えた、稀に見る人間。

ファッションアイコンのように見る見方もあるし、実際、このポートレートでは彼の作品のファッショナブルな側面にも光を当てているが、それを裏切るかのように(笑)インタビューの中で彼は常に「物語」について話している。語られるべきことがあり、それを表現するためにファッションも含めた映画技術の全てがある。それが彼の思想だ。このポートレートは、そんな彼の在りようを正しく映し出している。もっとも、このポートレート自体が、彼の企画立案だとしてもちっとも驚かないけれど。

憶測でしかないが、彼のこの表現に対する情熱は、彼が晒されている圧力への反発に由来しているのかもしれない。強い自己肯定は、彼が生き続けるために必須のものに見える。

次回作も楽しみです。

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2017.12.03

「COCOLORS」

「cocolors」と書いて「コカラス」と読ませる。元は音のない作品だったところ、声を当てて映画に仕立てたそうな。

モノクロームの味気ない世界に彩を与える人の心の様々を、色で表そうという試みらしい。

思い入れはわかるし、絵は確かにうまいと思うけれど、ストーリーが少し弱点になってしまっている。人の心はもうすこし複雑で、奥行があって、しかも思いもよらないほど強靭だ。と思う。

この作品ではそこが、ステレオタイプな描かれ方で、ちょっと残念。

まあでも、「削られて残ったところが形になって色をのせる」という表現はよかった。削られて残ったところなんだなあ我々は。

次も面白いの作って下さい。

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「泥棒役者」

大手のシネコンで掛かっているものは、本当にはずれが少なくなった。

この作品も、はじめのうちこそ強引なドタバタで、これはミスチョイスかと思ったが、途中いくつかの転換点を経て、伏線回収、みるみる収束していく。希望の持てるエンディングで、いい作品になっている。

要素の絡ませ方の妙というか、それぞれの登場人物が抱えている過去が、舞台となっている居間で展開される悲喜劇に絡んでくる、その投入のタイミングや話の繋げ方が上手い。

こういう演劇風の濃ゆい映画、割と好きです。

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2017.12.01

「探偵はBARにいる3」

もうね。
泣かせるの上手いわ相変わらず。
薄幸の女は泣かせの定番とわかっていても泣いちゃう。

「どうしてそういうやり方しかできないんだよ!」

っていう台詞が最高です。
そういう生き方しかできない不器用さ、不条理に我々は涙するのです。これはシリーズを通しての隠れた主題だと思うけど、今回はっきり台詞として出てきました。

本当はそれと対になっているはずの、
「だってこうしかできなかったのよ!」
は、いつ明示されるのでしょうか。幸薄い女たちは決してそれを口にせず、ただ眼差しだけがそれを語っているところが、より一層哀れを誘います。

思えば、1は最高に劇的に泣けて、2はちょっとドタバタ感が強すぎたけど、3でまた良くなった。この調子で続けてほしい。

ところで、このシリーズのいいところは、そういう泣かせを核にしながらも、笑いやずっこけがあって上げ下げしてくれるところなんですよねー。エンタテイメントの鑑です。

そして泣かせるにもちゃんと手順を踏んでくれる。同じような要素を盛り込んでも、見せる順番を誤れば微妙な感じになってしまうところ、きっちり筋の通った順序で、丁寧に展開してくれる。上手いなあ。これは原作の上手さなんだろうけど、それを映画でも過たずに見せてくれるのは作り手の手腕なんでしょうね。

こういうのを見ると、邦画だって決して捨てたものじゃないと思えます。充実したプレミアムフライデーをありがとうと言いたい。

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2017.11.26

「悪魔のような女」

やられた騙された。
推理小説あたりではほぼ定番のパターンなんだろうけど。

素直に見る癖がついていて、たいてい、作り手の意図どおりに騙されるワイは優良顧客てことで。

昔の映画だけど、全然古くなくて驚きです。
違いと言えばスマホとネットが出てこないくらい。

近代以降の人間て、基本的にはそんなに変わらないのねえ。

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2017.11.25

「火花」

芥川賞を獲った原作は読んでいないけど、これはいい話。

何かを目指して懸命に努力し、けれども到達できずに転身した大多数の我々凡人に、その経てきた時間の価値と生き続ける意味とを教えてくれる。

正直なところ、成功譚は娯楽としては面白いのだけど、本当に世の中に必要なのは、むしろこうした話だろう。

さすが芥川賞だけのことはある。

しかも、映画興行的には不振のどん底で、世の中ままならないという本作の基底にある理不尽をしっかりなぞっています。

たとえ興行的にはふるわなくても、本作がなかったら他の作品はきっともっとつまらなかったんや。だから、ただの一本も、無駄になんかなってない。

という作中の至言を、そのまま贈りたいと思います。

そうそう、少し壊れた感じのある神谷の目つきを演じていた桐谷健太という俳優さん、よかったです。ああいうの難しいと思うんですよね。その壊れた目つきを維持するのが。

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2017.11.24

「ジャスティス・リーグ」

んー。
微妙です。

出だしの世紀末感はかなりいい出来で、ザックスナイダーここにあり感出まくり。盛り上がります。

でもその後がなあ・・

ステッペンウルフ、造形はいいんじゃないでしょうか。

んでもなんか、悪役としての凄みというか粘りがなくて、ちょっと見掛け倒し。もっとおどろおどろしく逆転また逆転のシーソーゲームを見せて欲しかった。

だめだなあと思った一例を挙げると、スーパーマンにマウンティングされて目からビームを食らうところなんかがそうです。もっと顔が半壊するくらいの描写が必要なはずなのに、何もなし。その後を見てもたいしてダメージ感なし。悪役の存在感が薄められてしまっているのです。

それになんだか、寄ってたかって一人でやられる戦隊ものの怪人みたいで、ステッペンウルフさん途中から可哀そうになってきます。退場もなんだかそういうオチでいいのかなあ・・「IT」の真似になっちゃってる。

この残念な感じは、子供も鑑賞できるように手加減しているからなのでしょうか。

まあ、スーパマンのせいもあると思います。強すぎ。余裕あり過ぎ。もっとぎりぎりのところで薄氷の勝利を掴まなければ、娯楽としても芸術としてもヒーローとしてもダメダメです。だから嫌いなんですこのキャラクタ。

今後も、スーパーマンがこんな風に絡んできてしまっては、興行的にはともかく、お話としてはつまらなくなりそう。

エイミーアダムスも、妙齢の女性を演じるのは限界にきているんじゃないでしょうか。もっと「arrival」みたいな作品にシフトしていってほしい。

そんなこんなで、今回も、ガル・ガドット王女さんの輝くビボーとナイスバディと”Kids !”の舌打ちだけが印象に残った作品でありんした。

まあ、それで十分なんだけどね(⌒-⌒)

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2017.11.19

「ゴッホ 最期の手紙」

こ、この二次元クレイアニメとでも言うべき手法は一体・・・
誰ですかねこんなこと思いついたのは。

見慣れない手法なので、スクリーンに集中していると、なぜか途中睡魔が襲ってきました。眩暈のようなものだったのかもしれませんが。

慣れてくると、だんだんストーリーを読み取れるようになってきて、最後は割と感動ものです。ゴッホに対する印象がずいぶん変わりました。

ティーンの頃は、芸術家の中ではこの人とミケランジェロは間違いなく天才だろうと思っていたけれど、ミケはともかくゴッホの方は、狂的なところが目についていただけだったように記憶しています。

この作品も、始めのうちこそ狂的な部分を取り上げているのですが、次第に彼の、常識的で人間的な部分をクローズアップしていって、なぜ彼が唐突とも思える死を選んだかを解き明かします。一直線ではない構成で飽きさせません。

物語はすべて、ゴッホの作品群のレプリカ、それも動く!で構成されているのですが、要所ではまさに、映画の作り手が言いたいことにふさわしい絵が使われていて、たいへん効果的です。

映画の手法なんて出尽くしているのかと思いましたが、あるものなんですねえ、まだ新しい試みが。

美術史の中で、ゴッホの死がどう読み取られているのかは知りませんが、この映画による解釈はとても心に残ります。

いい作品がまたひとつ。

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